南アランドの中長期的な高値警戒域

代表的な新興国通貨の1つである南アフリカランド/円の下落が広がってきた(図表1参照)。先週、南アフリカの前大統領が収監され、それに対する抗議活動が拡大、「暴徒化」しているといった政治要因が懸念されていると言う。

【図表1】南アフリカランド/円の推移(2021年1月~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

ただ根本にあるのは、南アランドの中長期的な「上がり過ぎ」リスクではないか。少なくとも、2010年以降で見る限り、南アランド/円が最近推移している5年MA(移動平均線)近辺の水準は上昇トレンドの転換点となってきた(図表2参照)。

【図表2】南アフリカランド/円の5年MAからのかい離率 (2010年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

結果論で言えば、2010年以降で見る限り、足元は、南アランド売りが成功してきた水準だ。2010年以降で見ると、南アランド/円は、5年MA(移動平均線)前後で売り、そして5年MAを3割近く下回ったら買うといった中長期トレードがワークしてきた。これを参考にすると、足元はまさに売るタイミングであり、だからこそ南アフリカの政治不安といった売り材料に過敏な反応になっているということではないか。

南アランド/円が一時8円を上回るまで上昇したのは、新興国通貨の南アランドも基本的にはリスク資産と位置付けられるため、米国を始めとした世界的な株高、リスク選好相場が続いたことが一因だっただろう。この点は、今のところなお著変は見られない。

また、世界有数の金産出国である南アフリカにとって、金相場の上昇が続いたこともプラス要因になっていた可能性がある。ただこちらは、金相場が1900米ドルから一時1800米ドル割れまで反落、南アランドの買い材料といった点では陰りがでてきた。

ところで、「行き過ぎ」について、私の場合は、短期的には90日MAからのかい離率、そして中長期的には5年MAとの関係を確認するのが基本だ。その意味では、南アランド/円の短期的な上がり過ぎは、最近にかけてほぼ是正されたようだ(図表3参照)。

【図表3】南アフリカランド/円の90日MAからのかい離率(2010年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

そういった中で、それでも南アランドが続落するようなら、中長期的な「上がり過ぎ」の修正が本格化するものであり、短期的には「下がり過ぎ」が拡大する中での下落が続く可能性に注意が必要かもしれない。