最大変動率は米ドル/円、豪ドル/米ドル、ユーロ/米ドルの順

米ドル/円は、2017年から2020年まで、年間最大値幅が10円程度の小動きが続いてきた。為替相場の主力取引の1つである米ドル/円の小動きがこんなふうに長期化する中では為替相場は値動き(ボラティリティー)が乏しいという認識が一般化しているのではないか。

2020年は、米ドル/円以外で比較的大きく動いた通貨があった。たとえば、豪ドル/米ドルは2020年3月の「コロナ・ショック」で暴落したものの、その後大きく水準を回復した。この間の最大上昇率は4割にも達し、最大変動率((年間の高値-安値)/期末終値で計算)も29%となった(図表1参照)。

【図表1】主要通貨ペアの最大変動率
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成
*注.最大変動率は(高値-安値)/期末終値、2021年は5月14日現在で計算。単位は米ドル/円は円、ユーロ/米ドル、豪ドル/米ドルは米ドル。

また、ユーロ/米ドルも「コロナ後」の最大上昇率は15%に上り、年間の最大変動率も13.7%となった。米ドル/円こそ、年間の最大変動率が10%程度にとどまり、「コロナ・ショック」での歴史的な乱高下を除くと、結局小動きが続くところとなったが、以上のように見ると、為替相場全体が小動きだったわけではなく、大きく動いた通貨もあったというのが正しい総括だろう。

では2021年はどうかというと、実はこれまでのところでは米ドル/円の最大変動率が、ユーロ/米ドルや豪ドル/米ドルのそれを上回っている。実際にチャートで見ても、ユーロ/米ドルや豪ドル/米ドルは総じて方向感の乏しい展開が続いてきたが、これに対して米ドル/円はとくに4月にかけてはほぼ一本調子で米ドル高・円安が進むところとなった(図表2、3、4参照)。

【図表2】米ドル/円と日米金利差 (2021年1月~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成
【図表3】ユーロ/米ドルと独米金利差 (2021年1月~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成
【図表4】豪ドル/米ドルと豪米金利差 (2021年1月~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

 

このように、2021年の米ドル/円が4月にかけて一方向に比較的大きく動いたのは、米金利上昇の大相場に強く連動した影響が大きかっただろう。逆に、そんな米金利が4月に入ったところで上昇一巡、その後方向感の乏しい展開になると、米ドル/円もそれに平仄を合わせたようにボラティリティーが低下している。

以上のような米ドル/円と米金利の関係がこの先も基本的に続くなら、米ドル/円のボラティリティー回復の鍵は米金利が握っている可能性が高いだろう。