GDPは成長力を増し、中国経済は回復傾向

4月中旬までの中国株は上昇基調が続いています。3月末の終値から4月19日までの終値の騰落率は、上海総合指数が+1.0%、香港ハンセン指数も+2.6%となっています。

香港ハンセン指数の方が強い推移となっていますが、米国株の中でも特にグロース株が上昇したことや、アリババグループ(09988)が独禁法違反で規制当局から28億ドルの罰金を科されたことで、逆に中国のIT大手企業に対する管理強化懸念について一段落したとの認識が広がった事も要因と思います。

一方、中国本土株に関しては中国当局が商品市場への監視強化を示唆したことから素材関連が軟調でしたが、中国の2021年第1四半期(1-3月期)のGDP成長率が前年同期比18.3%増と市場予想の18.5%増は下回ったものの第4四半期の6.5%増よりも成長力を増したことから切り返した印象です。

ちなみにこのGDP成長率は1992年以来の四半期別伸び率で最も高い伸び率となります。もちろん、前年同期が新型コロナウィルスの影響で低いGDPだったことで高い実績となったこともありますが、それでも2021年通期の伸び率についても、8~9%の伸び率を予想するアナリストが多い状況です。

4月に発表されたGDP以外の中国の経済指標を見てみると、3月の輸出が前年比30.6%増(市場予想38.0%増、前月実績154.9%増)、輸入が38.1%増(市場予想24.4%増、前月実績17.3%増)、小売売上高が34.2%増(市場予想28.0%増)、鉱工業生産が14.1%増(市場予想18.0%増)となっています。

予想より低い実績もあるのですが、基本的には中国経済が立ち直ってきていることが示されている経済指標だと思います。中国では5月に労働節の連休がありますが、コロナワクチンの接種が進んでいることもあり、5連休には過去最多となる2億人近くの中国人観光客が移動するとの見通しもあり、小売業や観光関連事業などが再度見直される可能性が高くなりそうです。

中国のIT大手企業には出遅れ感

一方、米国株ではグロース株が大きく買い戻されていますが、中国のIT大手企業は当局の管理強化懸念が続いていたために出遅れています。

IT大手企業の代表的な企業の1つであるテンセント(00700)の業績と市場予想によるPERを確認してみましょう。2020年第4四半期の業績は売上が26%増、営業利益が24%増という伸びで、営業利益額以外の売上、粗利益、純利益、非IFRS準拠の調整後純利益は全て四半期として過去最高を更新しています。

テンセントの売上が初めて1,000億元を超えたのは2015年でしたが、2020年は調整後の純利益で初の1,000億元超えとなりました。なお、テンセントは5月20日の引け後に2021年第1四半期の業績発表を予定しています。

巨額の利益を積み上げてきたテンセントは、それを元手に数多くの会社に出資して事業領域を拡大してきました。新たな成長事業としてフィンテック、クラウドを中心とするビジネス向けサービスがあります。

出資先企業が成長し、上場して評価額の上がるケースも続出しています。美団(03690)、JDドットコム(09618)、テンセントミュージック(米ナスダック上場、ティッカーTME)などが上場し、次は60億米ドル超の評価だと予想される微医(ウィードクター)が上場申請の予定で、その後も関連企業の上場が続くとみられます。これらの評価がされると株価はさらに上昇余地を残すことになります。

一方、テンセントの市場平均による2023年12月期の予想PERを見ると21.8倍程度で成長力に比べると割安感があり、長期的には魅力的な有望対象の1つとして見当しても良いのではないかと思います。これと同じ事がアリババ(09988)にも言えると思います。

アリババも積極的に数多くの会社に出資して事業領域を拡大していますが、2023年3月期の市場予想のPERは17.6倍までの低水準となっています。