2020年の年の瀬は、日米ともに株高での締めくくりとなりました。
それは「2021年も引き続いて日米の株高が続く」ことへの大いなる市場の期待を反映したものであると言えますが、むしろ年の瀬を控えた市場全体のモメンタム(勢い)に依存するところが大きかったとも言えそうです。
つまり「そろそろ一旦調整を交えるだろうが、とりあえず年末までは突っ走ってしまえ」という力が働いた可能性も十分にあると考えられます。
年明け後の調整リスクに警戒
ゆえに、市場関係者のなかには「年明け後の調整リスクに要注意」と警鐘を鳴らす向きもあります。振り返れば、2018年の1月下旬から3月下旬にかけては、いわゆる「VIXショック」によって日米の株価が一旦大きく下押したこともありました。
当時と足下の状況で共通するのは、「市場全体が少々楽観に傾き過ぎている」ということです。もちろん相違点も多々ありますが、一応は警戒しておきたいところです。仮に株価が一旦調整入りした場合には、目先的にリスク回避の米ドル買いが強まる可能性もあると思われます。
年内に時代のフェーズが「コロナ後」に一変する
ちなみに、10-12月期の利益予想を発表したS&P500種構成企業の半数余りは予想数値を上方修正しており、そうした企業の数は過去10年で最多になりました。よって、足下の米国の株価に業績の裏付けや将来期待が反映されていることは間違いありません。
ただ、足下では新型コロナウイルスの「変異種」なるものの存在が確認され、今のところはその“正体”が掴みきれていません。複数の国や地域で新型コロナワクチンの接種が始まってはいるものの、それが有効であるとの確証を得るためのデータは、まだ出揃ってきていません。むろん、そうしたことも年内には明確になってくるでしょう。
そして、年内のどこかで時代のフェーズが「コロナ禍」から「コロナ後」へと一変すると思われます。当然、相場の顔つきもかなり大きく変わることとなるでしょう。
市場関係者の見解を色々と拾い集めてみると、「年明けから暫くは依然として緩やかに米ドル安・円高の流れが継続するが、いずれは緩やかな米ドル高・円安の流れに転じる」といった見方が多く見られます。
一方で「暫くは米ドル安・円高」と言っても、「100円を超えるレベルでより大きく円高に振れる」とか、「そのような状態が長く続く」などと見ている向きは少ないようにも思われます。
それは、やはり2021年下半期に向けて新型コロナワクチンの接種が世界中に広がることや経済対策の効果が現れることで、米国をはじめとする各国・地域の景気回復が進むと見立てる向きが多いからでしょう。
ただ、そうした効果が「明らかに現れた」と見なせるようになるタイミングはまだ不明です。よって、今しばらくは「リスクオフの円買い」が強まる可能性を排除するわけにはいきません。逆に「リスクオンの円売り」が一気に強まるリスクというのも排除できません。
とはいえ、遅かれ早かれ年内のどこかでは時代のフェーズが一変し、それに伴って投資機会が巡ってくるものと期待したいところです。
中央銀行の政策方針の変化に注目
あらためて認識しておきたいのは、新型コロナワクチンによって人々の日常生活が「通常」に戻ることのインパクトは、想定されている以上に大きいということです。人々の日常生活が「通常」に戻ったとき、それでも世界の主要中央銀行の政策方針が据え置きのままということはないでしょう。
例えば米連邦準備制度理事会(FRB)が、一時的な市場の動揺は避けられないと前もって承知したうえで、政策方針の変更をほのめかす場面というのは過去にもありました。それは、今後もきっとあると思われます。
仮に、FRBが金融政策の正常化を想定より前倒しで取り組むような場面があれば、一時的にも市場は大きく動揺するでしょう。むろん、そのような場面にこそ大きなチャンスが潜んでいると考えることもできるのではないでしょうか。