<ユーロ/米ドル>ユーロ高・米ドル安は1.25米ドル前後がせいぜい!?

ユーロ/米ドルは今年、「コロナ・ショック」の世界的株暴落が一段落した後、1.06米ドルで底を打つと、その後は1.2米ドルを大きく上回るまで上昇しました。ところで、そんなユーロ高・米ドル安は、NYダウなど株高と高い相関関係で展開したものでした(図表1参照)。一方で、このユーロ高・米ドル安は、「コロナ・ショック」で急拡大した独米金利差から見た米ドル割高が是正される動きでもありました(図表2参照)。

【図表1】ユーロ/米ドルとNYダウ (2020年)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成
【図表2】ユーロ/米ドルと独米金利差 (2019年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

「コロナ・ショック」では、一時的にユーロ/米ドルは急落(ユーロ安・米ドル高)。これは、究極の有事である「コロナ・ショック」において、基軸通貨米ドル確保の動きが急拡大したことが一因と考えられました。その中で、金利差から見て、対ユーロでも米ドルは大幅な割高となったのです。

ただそんな米ドル割高は、「コロナ・ショック」が一段落すると徐々に是正に向かいました。以上のような背景で、「コロナ後」のユーロ/米ドルが株高と連動しながら上昇した(ユーロ高・米ドル安)ということではないでしょうか。

さて、そんなユーロ/米ドルは、「コロナ・ショック」発生以前、2019年を参考にすると、最近までに金利差との関係が正常化した可能性があります。今年のユーロ/米ドルの上昇(ユーロ高・米ドル安)が、「コロナ・ショック」で起こった金利差から見た米ドル割高の是正が主因だったなら、それは一巡が近い可能性があるのではないでしょうか。

また、経験的にユーロ/米ドル上昇は52週MA(移動平均線)を10%前後上回るまでがせいぜいでした(図表3参照)。足元の52週MAは1.13米ドル程度なので、それを10%上回るのは1.25米ドル前後という計算になります。

【図表3】ユーロ/米ドルの52週MAからのかい離率(2005年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

以上からすると、最近にかけて展開してきたユーロ高・米ドル安はすでに終盤に入り、2021年にかけて比較的早い段階で1.25米ドル前後の水準で一巡する可能性があるのではないでしょうか。

<豪ドル/米ドル>豪ドル高・米ドル安、0.75~0.8米ドルで一巡!?

これまで述べてきたユーロ/米ドルと株、金利との関係は、基本的に豪ドル/米ドルでもほぼ同様と言えそうでした。要するに、豪ドル/米ドルも、「コロナ後」はNYダウなど株高と連動して上昇(豪ドル高・米ドル安)、そしてそれはまた、金利差から見た米ドル割高是正の動きでした(図表4、5参照)。

【図表4】豪ドル/米ドルとNYダウ (2020年)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成
【図表5】豪ドル/米ドルと豪米金利差 (2019年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

さて、2019年までの関係を前提にすると、金利差から見た対豪ドルでの米ドル割高は、最近までにほぼ是正された可能性があります。「コロナ後」豪ドル高・米ドル安が、金利差から見た米ドル割高是正が主因なら、それはほぼ終わりつつある可能性があります。その上で、2021年にかけての豪ドル/米ドルは、普通の為替と金利差の関係次第になるのかもしれません。

ところで、豪ドル/米ドルの上昇は、経験的には52週MAを10~15%上回った水準で一巡となってきました(図表6参照)。そんな52週MAは、足元で0.69米ドル程度。従って、それを10~15%上回る水準は0.75~0.8米ドル程度といった計算になります。

【図表6】豪ドル/米ドルの52週MAからのかい離率(2000年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

以上をまとめると、豪ドル/米ドルは、2021年にかけて、豪米金利差などをにらみながら、0.75~0.8米ドルで上昇が一巡するといった見通しになるのではないでしょうか。

 

※12月18日から12月24日の間、吉田恒のレポートは休載いたします。

・為替デイリーは12月18日から12月24日休載

・為替ウィークリーは12月21日休載