2020年8月31日、著名投資家ウォーレン・バフェット氏率いる米バークシャー・ハザウェイが日本の5大商社株の発行済み株式の5%超を取得したことが明らかとなり、値動き次第で最大9.9%まで持ち分を高める可能性があると発表され、マーケット関係者を驚かせました。
御年90歳にして「初めて日本株を購入した」ことで、割安に放置されてきた日本市場への注目が高まることが期待されますが、なぜバフェット氏は日本の商社株を購入したのでしょうか。
商社株の魅力(1):配当利回り
多くの金融関係者は日本の商社株の配当利回りが2~5%と高いことに着目しています。
コロナ禍にあって、米国はじめ主要国の中央銀行が政策金利をゼロに引き下げたことで、主要国の長期債(10年債)利回りも1%を割り込んでいます。10年債券を保有してもほとんど金利がない反面、株式の益回り(※1)や配当利回り(※2)の魅力が増していることが株式市場への資金流入をもたらし、価格を押し上げています。
(※1)株式の益回り=企業の1年間の1株当たり利益が株価の何%を稼ぐかを示す数値
(※2)配当利回り=購入した株価に対し1年間でどれだけの配当を受けることができるか
この点、米国株は高すぎて「バリュー投資」重視のバフェット氏が新たに買える銘柄は多くないため、「割安放置の日本株市場に乗り出したのではないか」という見方もありますが、商社株という選択は「商品の時代の到来」を連想させると見る向きもあります。
商社株の魅力(2):資源事業の強み
バフェット氏は日本の商社株買いについて「5大商社が世界中で多くの合弁事業を手掛けており、これが将来、相互利益の機会が生まれることを期待している」としています。
原油・天然ガス、鉄鉱石、石炭、非鉄金属の権益投資、取引仲介などが強みである三井物産、三菱商事。金属鉱山資源開発、鉄鋼製品加工事業などの事業が強みの住友商事、そして飼料穀物、大豆、小麦の貿易など食料インフラに強みを持つ丸紅など日本の大手商社はコモディティ事業を幅広く手がけており、その権益も魅力です。
バフェット氏はこうした資源関連事業に着目したのではないでしょうか。それは、バフェット氏がバリックゴールドというカナダの鉱山会社株を購入したことにも通じています。
バフェット氏の金鉱山会社購入
バリックゴールド社はカナダの金鉱山会社で金生産量は世界一です。つまり、バリックゴールド社は金価格が上昇すれば利益が拡大します。主要国から金利が消失し、世界が財政支出を拡大させていることから「法定通貨への信認」が低下しているとの指摘がある中、ゴールド価格はコロナショック以降大きく上昇し、8月に2,000ドルの大台を突破、史上最高値を更新しています。
バフェット氏はこれまでゴールドには付加価値がないとして否定的なスタンスでしたが、そのゴールドを掘っている企業に投資したことを明らかにしたのです。そして、この金の生産大国が豪州です。現在、豪州は中国に次いで世界第2位ですが、早ければ2021年にも世界1位の金生産国に躍り出ると見られています。
豪ドルは大底をつけた
豪ドルは2019年、米中貿易摩擦のあおりで下落が続いていましたが、コロナショックの下落時にリーマンショック時の安値をも大きく下回りました。このときの安値を起点に、豪ドル/米ドル、豪ドル/円ともに、きれいな上昇トレンドが続いています。
足下では、株式市場が不安定化してきたことで米ドル買いが旺盛となり調整を強いられていますが、米ドルの巻き戻しが収束すればゴールドの調整も収束すると考えられ、ゴールド反転上昇と歩調を合わせて豪ドルが上昇する可能性が大きいのではないかとみています。