米ドル/円小動きが例外、「コロナ後」米ドル安大相場

「コロナ・ショック」と呼ばれた世界的な株大暴落が一段落したのは3月末。それ以降の最大変動率を「高値/安値」で計算すると、米ドル/円は7%程度になります。高値は1米ドル=111円程度、そして安値は104円程度ですから最大7円程度下がったということになります。これは、ほかの主要通貨と比べるとかなり小幅といえます。別な言い方をすると、最近にかけての為替相場、米ドル/円から受ける印象ほど、小動きではありませんでした

たとえば、同じ計算方法でユーロ/米ドルの最大変動率を計算すると12%程度、さらに豪ドル/米ドルは28%程度にもなります。こんなふうに見ると、「コロナ・ショック」が一段落した「コロナ後」は、ユーロ高、豪ドル高が大きく進み、その裏返しで米ドル安の大相場が展開していたことがわかるでしょう。

そしてその中では、相対的に小幅な米ドル/円の値動きが、むしろ例外的だったといえるでしょう。このように、「コロナ後」は、米ドル/円のトレンドはわかりにくい展開が続きましたが、対円以外ではとてもわかりやすい米ドル安トレンドが展開してきました。

トレードの利益を追求する考え方の一つに、「トレンドのある相場を選ぶ」ということがあります。その意味では、「コロナ後」のFXトレードは、円以外の通貨に対して米ドルを売る、別な言い方をすると、外貨の米ドルに対する取引をドルストレートと呼ぶので、ユーロ/米ドルなどドルストレートを買うトレードは、基本的には有効だったのでしょう。

著名トレーダーに共通した方針は「トレンドのある相場を選ぶ」

それは、机上の空論ではなく、FXトレーダーの中でも、そのようなトレード戦略を展開してきたケースが少なくなかったようです。私は7月から、原則毎営業日(日本の祝祭日除く)、為替情報を発信する動画「為替デイリーLIVE」を行っており、その中でゲストとして、これまで著名なFXトレーダー3名に、電話でコメントをいただいてきましたが、まさにその3名とも「円以外の通貨に対して米ドルを売る」トレード戦略が、これまで主軸だったようでした。

この番組では、原則金曜日をゲスト・コーナーとして、これまでに陳満咲杜さん、BULLヒロさんに各2回、そしてバカラ村さんに1回ご出演いただき、現在、そしてこの先のトレード戦略について、私とやりとりしてきましたが、「円以外の通貨に対して米ドルを売る」トレード戦略を主軸としたことで、おおむね共通していたのです。

日本のトレーダーは、最も馴染みがあり、情報量も多い米ドル/円がメイン、といったことは、上述の3名とやり取りする中では基本的にありませんでした。3名に共通したのは、「トレンドのある相場を選ぶ」というトレードの基本的な考え方への忠実な姿勢だったのです。

調整局面はある、その対応は何を手掛かりに考えるか!?

「コロナ後」、基本的には円以外の通貨に対してわかりやすい米ドル安トレンドが続きました。ただ相場は上下動するもの。米ドル安トレンドが、かりにこの先も続くとしても、調整的な局面への対応をどう考えたらよいか。今回は、ポジションを手掛かりにするという考え方を紹介したいと思います。

米ドル安トレンドが展開する中では、基本的に米ドルを売り、米ドル以外の外貨を買うことになるわけですが、その中でプロの投資家の代名詞のような存在、ヘッジファンドなどの取引を反映しているとされるCFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋のポジションを見ると、ユーロは対米ドルで過去最大の買い越しになっています(図表1参照)。これを見ると、さらなるユーロ買いは控え、むしろ当面ユーロは売りもありうるのではないでしょうか。

【図表1】CFTC統計の投機筋のユーロ・ポジション (2017年~)
出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成

 

そんなユーロに対する以上に、この数ヶ月で大幅な米ドル安となったのが対豪ドルでした。ところが、少なくともCFTC統計の投機筋のポジションを見る限り、豪ドルは足元でも全く極端な買い越しとはなっていません(図表2参照)。

 

【図表2】CFTC統計の投機筋の豪ドル・ポジション(2017年~)
出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成

これを参考にするなら、米ドル安トレンドの調整局面でも、上述のユーロと豪ドルはトレード戦略が異なる可能性があるでしょう。つまり、米ドル安トレンドの調整、米ドル高・豪ドル安となったところでは、豪ドルは売るのではなく、さらに買い増す、「押し目買い」の可能性もあるのかもしれません。

こういったことを、チャート分析、それも細かいことではなく、大原則を参考にしながら投資判断する、それはまさに、私の基本的な考え方でしたが、上述のように7月から「為替デイリーLIVE」を始め、親交のあるトレーダーに改めてコメントを聞いても、全く違和感のなかったことは、新たな発見でした。

一方で、足元の一般的なFX取引シェアは、まだ米ドル/円が圧倒的に大きいようです。「馴染み」ではなく、「トレンドの有無」が、トレードの成否の分岐点の可能性が高いということは、まだ浸透させる余地が大きそうだと感じています。