説明困難な状況が続くトルコリラ安

トルコリラ/円は、2014年に50円を超えていたところから、今年(2020年)は一時15円割れとなり、すでに5年以上の続落となっている。通貨が5年以上続落するということは、それ自体は過去にもあったことだ。ただ、今回のトルコリラの下落で注目されるのは、過去の経験で説明できる範囲を超える動きになっているということだ。

たとえば、過去のトルコリラ/円の下落は、購買力平価が基本的な下限となってきた(図表1参照)。購買力平価は、足元で20円程度。2020年のトルコリラ/円は、そんな購買力平価を大きく、長く下回ってきた。

【図表1】トルコリラ/円と購買力平価(2005年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

このように、購買力平価との関係などで見ると、足元のトルコリラ/円の下落は、これまでの経験で説明できる範囲を超えた動きとなってきた。その意味では、この間のトルコリラ下落要因とされる、エルドラン大統領独裁体制の弊害やコロナ問題の影響などによって、過去に経験したことのない、「未曽有のトルコリラ安」になっている可能性がある。

投資とは、過去の経験を参考に考えることが基本だ。その意味では、「過去の経験が参考にならない」となると、トルコリラへの投資は、過去になかったほど難しい判断を求められることになるだろう。

ただ、そういった中で一つ、このようなトルコリラ暴落局面でも、過去の経験がぎりぎり機能していることがある。それは、「10年に一度のトルコリラ大暴落後は、しばらくの間、短期的な下落が限定的にとどまる」ということ。

2018年に、トルコリラ/円の90日MA(移動平均線)からのかい離率はマイナス30%以上に拡大した(図表2参照)。これは、経験的には「10年に一度の大暴落」だった。その上で、さすがに「10年に一度の大暴落」後は、短期的な下落も限定的にとどまり、具体的には90日MAからのかい離率はマイナス15%以上に拡大することは数年間なかった。

足元のトルコリラ/円の90日MAは16円弱。これは、過去3ヶ月の平均という意味では、今後はさらに下がることが予想される。ただし、「大暴落後はしばらくの間、下落が限定的になる」ことが今回も当てはまり、具体的には90日MAを15%以上も下回る可能性が低いなら、2020年中に、トルコリラ/円は13円を割れる可能性は低いといった計算になる。

【図表2】トルコリラ/円の90日MAからのかい離率(2000年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成