6月、IMF(国際通貨基金)が発表した2020年の世界経済成長率は4.9%減。世界銀行の見通しは5.2%減、OECD(経済協力開発機構)の見通しは6%減です。今回の景気後退はリーマンショックがもたらした影響の約3倍で、第2次世界大戦後の最悪となると予想されています。そうした中で、株式市場などリスク資産はその先の景気回復のシナリオを見据え、コロナショックの安値から大きく切り返しています。

膠着状態が続く米ドル/円相場

米国株式市場ではナスダック総合指数がコロナショックの下落をすべて取り戻し、史上最高値を更新し続けています。また、今週に入ってからSOX指数と呼ばれるフィラデルフィア半導体指数が新高値を更新。半導体企業などテック企業の強さが際立っています。特に6月に入ってから中国株の上昇が目覚ましく、2015年相場の再来ではないかとの指摘も出てきました。

米国株など世界の株式市場が堅調に推移する中、米ドル/円相場は上値が重く膠着が続いています。リスクテイク相場でも素直にドル買いとならないのは、米国の金融・財政政策によるドルのバラマキが起きており、ドル安への警戒からドル離れが進むとの見方が根強く、その影響のためだと思われます。

中国の景気回復を示す動き

米ドル/円相場には妙味が薄い状況が続いている状況ですが、6月に入って中国株が上昇しています。国営新華社系の中国証券報が7月6日に「ヘルシーなブル相場」と評した記事を一面トップに掲載しており、この上昇の裏には中国当局の関与を指摘する向きもありますが、中国の景気回復を裏付ける指標も次々と出てきている状況です。

中国サービス業購買担当者指数(財新サービス業PMI)が6月には58.4となり、近年目にすることがなかった好結果を示しました。6月の中国製造業購買担当者景気指数(財新製造業PMI )も50.9となり、前月実績(50.6)と6月の事前予想(50.5)を上回るなど、中国国内の経済活動が回復に向かっていると考えられます。

中国の復活はコモディティ市況にも表れており、5月には中国の原油需要が急回復。5月の中国の原油輸入量は前月比151万バレル増の日量1134万バレルと過去最高を更新しました。中国国内の原油需要はパンデミック以前の90%あまりの1300万バレル程度にまで回復したとされています。原油市況の下値が固く堅調に推移しているほか、景気の先行指標とされる銅価格もしっかりとした上昇トレンドを描いています。

国際的な海上運賃の指標であるバルチック海運指数もおよそ9ヶ月ぶりの高水準にまで回復しており、コロナ禍でストップした世界の生産活動が再開し需要が戻ってきていることが伺えます。

今、注目すべき通貨は

そこで今、注目すべき通貨として資源国通貨と評されるオーストラリアドルが挙げられます。

オーストラリア準備銀行(中央銀行、RBA)は7月7日、政策金利を0.25%に据え置くことを決定。ロウ総裁は「インフレ率が持続的に目標値である2~3%に達すると確信が持てるまで利上げはしない」と明言しており、金利に妙味はありません。そうした中で、マイナス金利については金融システムへの影響を伴うため、導入する可能性は「極めて低い」との見解を示しており、これ以上の利下げの可能性は今のところ考えられません。

米国にはマイナス金利導入の観測が根強く残るほか、ニュージーランド中央銀行は国内銀行に対し、年末までにマイナス金利に対応できるよう備えることを促しています。そこで、さらなる利下げの警戒がある通貨と比較すれば、豪ドルへの資金流入が見込めると考えることもできます。

一方で、オーストラリアで2番目に人口が多いビクトリア州では7月7日、新型コロナウイルスの新規感染者が191人に上り、ビクトリア州のメルボルンで6週間のロックダウンが導入されることになりました。新型コロナウイルスによる国内経済の冷え込みが懸念材料ではありますが、昨今のマーケットは感染者数が主軸テーマではなくなってきています。中国株やコモディティ市況の上昇が続けば豪ドルへの注目度が上がってくるものと思います。