「問題になる豪ドル高」とは?

豪ドルは米ドルに対して3月の安値0.55米ドルから一時0.7米ドルまで、最大27%程度も上昇、昨年末以来の水準まで豪ドル高となった。

これについて、豪中銀のロウ総裁は、6月22日、「現時点では、豪ドルが過大評価されていると主張するのは非常に難しいと思う」、「(為替相場の上昇はある時点で問題になる可能性があるが)その時点にはまだ達していないだろう」などとの見解を示した。

では、「豪ドルの過大評価」、「問題になる豪ドル上昇」とは、具体的には「いくら」ぐらいなのか。

豪ドル/米ドルと購買力平価の関係を見ると、消費者物価で計算した購買力平価を上回った期間は限られ、一方生産者物価で計算した購買力平価は過去20年、ほぼ下限となってきた(図表1参照)。足元で、前者は0.85米ドル、後者は0.62米ドル。このレンジの中間点が0.73米ドルなので、前者を割高、後者を割安の目安にすると、足元はなお若干豪ドル割安水準にあるといえそうだ。

【図表1】豪ドル/米ドルと購買力平価 (1973年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

次に過去5年の豪ドル/米ドルの平均値を参考に考えてみよう。じつはこの過去5年の平均値も0.73米ドルだ(図表2参照)。従って、豪ドルは過去5年の平均値もまだ下回っているわけだ。

【図表2】豪ドル/米ドルの5年MAからのかい離率(1990年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

以上のように見ると、上述のロウ総裁の「現時点では、豪ドルが過大評価されていると主張するのは非常に難しい」という言葉にも、より共感できるのではないか。では、「豪ドルの過大評価」、「問題になる豪ドル上昇」とはどういうイメージなるだろう。

購買力平価、5年MA(移動平均線)の関係を参考にすると、ざっくりいって0.8米ドルを超えてくる当たりが、「豪ドル割高」「豪ドル高の問題」といった議論が浮上する水準ということではないか