米ドル/円は上がるのか、下がるのか?

G7を中心に、世界的な相次ぐ経済対策などを受け、金融市場の混乱も徐々に沈静化の兆しが出てきた。ところで、混乱が一息つくと、後に残ったのは、主要な市場の記録的な「下がり過ぎ」だ。

たとえば、90日MA(移動平均線)からのかい離率で見ると、米金利(10年債利回り)も、米国株(NYダウ)も、2000年以降で最高の「下がり過ぎ」となった(図表1・2参照)。また、「コロナ・パニック」のリスクオフに追い打ちをかけたような形となった原油暴落だが、その原油も、WTIで見るとやはり2000年以降で最高の「下がり過ぎ」に並んできた(図表3参照)。

【図表1】米10年債利回りの90日MAからのかい離率(2000年~)
出所:リフィニティブ・データよりマネックス証券が作成
【図表2】NYダウの90日MAからのかい離率(2000年~)
出所:リフィニティブ・データよりマネックス証券が作成
【図表3】WTIの90日MAからのかい離率(2000年~)
出所:リフィニティブ・データよりマネックス証券が作成

まだ油断できないが、パニックが一服したら、上述の「下がり過ぎ」の反動で、米金利上昇、米株高、原油高となる可能性がある。それは、米ドル/円に対しては、普通なら上昇(米ドル高・円安)を後押しする要因となりそうだ。

ただし、上述のように、90日MAからのかい離率が示すような短期的な「下がり過ぎ」は、一方で経験的には中長期的なトレンドが下落方向で起こることが多かった。その意味では、米ドル/円の中長期トレンドは下落(米ドル安・円高)に向かっている可能性がある

そうであるなら、短期的な「行き過ぎ」修正に伴う米ドル/円反発は一時的な可能性がある。かりに、一時的な動きなら、経験的には52週MAを大きく(5%)、長く(1ヶ月)ブレークしないというのが、経験則の示すところ。

逆にいえば、そんな52週MAを、大きく、長く上回るようなら、米ドル/円の上昇は一時的ではなく、継続的、つまりトレンドとして展開している可能性がある。乱高下が続く為替相場だが、そんなテクニカルな目安を参考に注目してみたいと思う。