2020年1月、現状の価格動向
2020年に入ってからのJ-REIT価格は、投資家の需要の強さを示しているものと考えられる。東証REIT指数は1月に入って上昇傾向となり、8日の2,118ポイントから22日には2,181ポイントとなっている。
株式市場と比較すれば上昇率が小さいが、需給面でみればJ-REIT価格が下落する可能性がある状態だ。その理由は、1月に入り22日時点で8銘柄が増資を公表しているためだ。第1四半期(1月~3月)はJ-REIT市場では増資が多い時期ではあるが、2014年以降でみれば平準化されていた。
従って増資による供給増加の影響を吸収できるほど投資家のJ-REIT投資需要が高いと考えられる。この点からみれば、当面のJ-REIT価格に関して急落の可能性は低いと見るべきだろう。
2019年は東証REIT指数が年末時点で初めて2,000ポイントを超えた年
さて本題に移り、2019年のJ-REIT価格動向の最大の特色は、東証REIT指数が年末時点で初めて2,000ポイントを超えた(図表1)という点だ。東証REIT指数の高値は2007年5月末の2,612ポイントであるが、年末には2,000ポイントを割り込んで取引を終えている。
一方で東証REIT指数の騰落率は、20.9%に留まった。東証REIT指数の算出が開始された2003年から17年間で騰落率は歴代7位という結果となった。2018年末の指数が1,774ポイントと比較的高い水準であったことも影響している。騰落率が高い2012年・2013年は、前年末の東証REIT指数が図表1の通り低い状態であったため上昇余地が大きかったと言えるだろう。
個別銘柄では物流系の上昇率が高かった2019年
個別銘柄に目を移すと2019年は全銘柄の価格が上昇した年となった。価格上昇率が高かった銘柄は順に三井不動産ロジスティクスパーク(55.6%、証券コード3471)、ラサールロジポート(52.0%、証券コード3466)、三菱地所物流リート(48.2%、証券コード3481)と上位3銘柄は物流系銘柄が占めた。
2018年は市場全体では上昇基調であったが、物流系は逆行安になる局面が多かったことが影響し、価格上昇余地が大きかったためと考えられる。
一方で上昇率が低かった銘柄は、いちごホテルリート(1.5%、証券コード3463)、ジャパン・ホテル・リート(3.6%、証券コード8985)、フロンティア不動産(4.9%、証券コード8964)となっている。この3銘柄以外でもホテル系や商業系銘柄の上昇率が低くなっている。
この要因として、ホテル系や商業系銘柄の賃貸収益下落への懸念が強いことが挙げられる。2019年のJ-REIT価格を牽引した生損保などの機関投資家は、イールドハンティングとしてJ-REIT投資を行っているためイールドの前提となる分配金減少リスクを回避する姿勢を強めたと考えられる。