◆先日、秋田に行ってきた。講演の後はおいしい比内地鶏を、新米で作ったきりたんぽの鍋や焼き鳥などで堪能した。地元の銘酒、一白水成との相性も申し分なく杯が進んだ。会食をご一緒した地元の方から、秋田の夏祭りの素晴らしさを聞いた。竿燈まつり、盆踊り、花火。青森のねぶたに代表されるように、東北には盛大な夏祭りが多い。短い夏だからこそ惜別の情を祭りで昇華させるのだろう。

◆翌朝ホテルで地元紙を読んでいると「おなごりフェス、来年で幕」という記事に目が止まった。能代市で行われるおなごりフェスは、能代青年会議所(JC)が1987年に始めたイベント。各地の夏祭りを一堂に集めて行く夏を惜しむ趣向が人気を博し多くの観光客を集めてきた。しかし、フェスの運営に携わってきた実行委員はJCのOBでみな40~50代。本業との兼ね合いもあってOBだけでは運営負担が重い。やはり祭りは「若い衆」が担い手だ。その若者が県外に流出して減っていることが中止の理由であろう。

◆県外から転入した人の数と転出数の差を人口で割った「超過転入率」という指標がある。15~29歳では、東京がプラス4・52%で、ダントツ1位なのは想像に難くないが、最も低いのは秋田のマイナス3・49%である。近隣の青森も次いで低い。津軽弁のラップが話題を呼んでいる吉幾三さんの「TSUGARU」は都会へ出て行ったままの子供たちを嘆く歌だが今に始まったことではない。30年以上も前から「俺(お)ら東京さ行ぐだ」と若者は出て行ったままである。

◆地方創生が日本活性化の鍵といわれて久しい。インバウンド需要と地方創生を結びつけるアイデアは悪くない。しかし、もっと大きな雇用機会を作ることが重要だろう。それには遠回りだが起業の精神をこの日本で醸成させることかもしれない。シリコンバレーのような辺鄙な場所にあれだけ多くのハイテク企業が存在し、優秀な従業員を雇用しているのだ。秋田には世界に誇るグローバル企業、TDKの工場が何カ所もあるが、その規模の企業があと数社あれば状況は大きく変わるだろう。