肉親からの資金援助なら贈与税が大幅に減らせる

最近は、住宅購入時に両親や祖父母からの資金援助を受ける方が増えているようです。
手元資金に余裕が出れば当初の計画よりワンランク上のマイホームに手が届くかもしれませんし、堅実派の方なら住宅ローンの借入金額を圧縮することもできます。

とはいえ、年間110万円を超える贈与は原則、贈与税の課税対象となってしまいます。
仮に1,000万円の贈与を受けたとすると177万円、2,000万円なら585万5000円もの贈与税がかかります(特例贈与の場合)。

そこで、両親や祖父母に資金を援助してもらうのであれば上手く活用したいのが、「住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」の特例です。

これは、贈与するのが直系尊属(父母や祖父母など)で、贈与を受ける側は20歳以上、かつその年の合計所得が2,000万円以下など一定の条件を満たせば、法律で定められた金額までは援助された住宅資金に贈与税がかからない、というものです。詳細は国税庁のウェブサイトでご確認ください。

特例の非課税枠は住宅の種類により異なりますが、前回「マイホームを買うなら今のうち? 『住宅ローン控除』が“期間限定”で3年間延長」でご説明した通り、政府の消費税増税に伴う住宅取得支援策の一環として、2020年3月31日(契約締結日)までの期間限定で、一般住宅が最大2,500万円、省エネ等住宅が最大3,000万円まで拡大されています。

ちなみに省エネ等住宅とは、

1.省エネルギー性の高い住宅(断熱等性能等級4または一次エネルギー消費量等級4以上)
2.耐震性の高い住宅(耐震等級2以上または免震建築物)
3.バリアフリー性の高い住宅(高齢者等配慮等対策等級3以上)

のいずれかを満たす家屋のことを指します。

親や祖父母からまとまった住宅資金の贈与を受ける場合、「相続時精算課税制度」を利用することも可能で、現行制度では2,500万円まで贈与税がかかりません(特別控除)。

しかし、相続時精算課税制度では、贈与者(親や祖父母)の相続が発生した際にこの特別控除分が相続財産に加算され、相続財産の額によっては相続税を負担することになる可能性があります。

これに対し、「住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」の特例の場合は、特例の適用により非課税となった贈与分を相続財産に加算する必要はありません。

さらに、通常の贈与ですと贈与の相手が推定相続人の場合、「贈与から3年以内に贈与者が亡くなった場合、その贈与はなかったものとされ、贈与された財産は相続財産と判断される」という“3年ルール”の縛りがあるのですが、この特例を使った場合はルールの適用外となるのも有利な点といえるでしょう。

竣工遅れや申告のし忘れで適用外となることも

特例の利用を考えているなら、気を付けたいのは贈与のタイミングです。

「贈与を受けた翌年の3月15日までに家屋が完成せず引き渡しができない場合」や「贈与を受けた翌年の12月31日までに入居できない場合」「住宅ローンの決済後に贈与を受けた場合」などは特例の適用が受けられなくなってしまいます。

多くは住宅の引き渡しとほぼ同時に住宅ローンの決済がスタートするため、贈与の資金移動は住宅の引き渡しの前にしておく必要があります。しかし、竣工が「翌年3月15日」より遅れそうなら年内の贈与は見送り、翌年に延期した方がいいかもしれません。

さらに、特例の適用を受けるには贈与税の申告が必須となります。贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日の間に、贈与税の申告書に戸籍の謄本、登記事項証明書、契約書の写しなどを添付して管轄の税務署に提出しなければなりません。

申告が1日でも遅れると、特例は適用されません。申告期限が過ぎてから慌てて税理士さんに泣きついても、こればかりは如何ともしがたいのです。

「住宅資金取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」の特例は非常に利用価値の高い制度といえますが、適用を考えるなら、贈与の時期から入居、申告までを見越して綿密なプランを立てておく必要がありそうです。