豪ドルとの相関性が高いNZドル

ニュージーランドドル(以下NZドル)はオセアニア通貨と呼ばれ、値動きも豪ドルとの相関性が高い通貨です。

ニュージーランドの主要輸出産業は酪農業のため、NZドルは農産物価格、主に乳製品などの価格に影響を受けます。鉄鉱石価格などの資源価格が重要な豪ドルとは大きな違いがあります。

中国経済動向がNZドルを動かす重要な材料に

ニュージーランドの経済は貿易依存度(輸出+輸入)が高く、GDPの約70%を占めています。2013年まで最大の輸出先はオーストラリアでしたが、今では最大の輸出先は中国です。

ニュージーランドからの輸出国トップは中国(23%)次いで豪州(16%),米国(10%),日本(6%)と続きます。日本は主に乳製品や木材、果実、肉類などを輸入しています。輸出全体の20%強が中国向けであるため、豪ドルと同様、中国経済動向がNZドルを動かす重要な材料となっています。

ニュージーランドからの輸出品目トップは酪農製品で(26.8%)、食肉(12.3%)、木材(11.0%)と続きます(※1)。乳製品価格の下落などを背景に、ニュージーランドでは2015年以降、断続的な利下げが実施されてきました。

(※1)輸出データ NZ統計局2017年度

乳製品価格オークション

ニュージーランドのフォンテラ社は、世界的な乳製品企業です。フォンテラ社の生産者乳価の動向や株価動向がNZドルに影響を及ぼすことも珍しくありません。

乳製品価格は、月に2回開催されるフォンテラ社主催の電子オークションである「グローバルデイリートレード(GDT)」をチェックするといいでしょう。

GDT価格指数は、ニュージーランドのオークションで取引される9つの乳製品の加重平均にもとづいた乳製品価格の変化を表すもので、以下のサイトから確認することができます。

>>GlobalDairyTrade - GDT Events Results

2014年夏から2015年夏にかけての1年間、NZドルは大きな下落トレンドを描きました。
上記サイトのGDT Price Index over 10 yearsを見ると、乳製品価格は2014年春先から下降し始め2015年夏まで下落の一途を辿ったことが確認できます。

この時は旺盛な中国需要を見込んでニュージーランドと欧州が生乳供給を増やしたため、中国での粉ミルク在庫が急増しました。生産が増加する一方、中国の需要が鈍化したため乳製品価格が暴落したことに連れて、NZドルも1年間にもわたる下落相場を演じたのです。

8月には政策金利が過去最低の1%に

インフレターゲット(inflation targeting)として世界で最初にインフレ目標が導入されたのは1990年で、ニュージーランドの中央銀行であるニュージーランド中央銀行(RBNZ)によってでした。消費者物価指数(CPI)が前年比で中期的に+1~+3%の範囲内に収まるように政策運営を行っています。

ニュージーランドの政策金利は2008年には8.25%もありましたが、乳製品価格が下落したことなどを受けて、2015年以降、繰り返し利下げが行われています。

2019年5月8日、ニュージーランド中央銀行(RBNZ)は2年半ぶりに政策金利を0.25%引き下げ1.50%とすることを決定。8月7日にもさらに0.5%引き下げ、過去最低の1%に大幅利下げしました。

今後の追加利下げの可能性にも言及したことで、NZドルは大きく下落しています。声明では雇用や物価への弱気な見通しが示され、物価目標の到達については2021年第2四半期から第4四半期に先送りしています。

NZドルの値動きが大きくなる時間帯

ニュージーランドの為替市場は日本よりも3~4時間ほど早くオープンし、日本時間の朝方4時~昼12時頃までニュージーランドのウェリントン市場での取引が活発となります。

朝方4時台から東京勢が参入してくる8時くらいまではオセアニア時間と呼ばれ、流動性が低く普段は値動きがあまり大きくないのですが、時折、投機筋らが仕掛けてくることもある時間帯になります。

2019年1月3日の米ドル/円相場、NZドル/円相場の急落は早朝7時30分頃、まさにウェリントン市場の時間帯でした。世界のお正月休場後、真っ先にオープンする市場がウェリントンであったことも一因と思われます。

土日に何か大きな事件が起きた場合、ウェリントン市場が一番最初にその影響を受ける市場である、ということも覚えておくといいでしょう。

また、乳製品輸入が大きい中国の景気動向にも敏感に反応しますので、香港市場がオープンし、中国の指標が発表される午前10時台などにも値動きが大きくなることがあります。