為替市場での通貨別取引高は、米ドルが約40%と圧倒的なシェアを誇っており、ユーロ、円を加えた3通貨で為替取引全体のおよそ70%を占めています。そのため、この3通貨の動向は常にウォッチしておくことが肝要です。
なかでも通貨ペア別取引シェアにおいては、米ドルとの通貨ペアが全体のおよそ90%を占めています。また、国際通貨基金(IMF)報告では、世界各国が保有する外貨準備の60%以上が米ドルです。これは米国のドルは貿易や資本取引などの決済通貨として使われる「基軸通貨」の役割を担っているためです。
平時における金利差
平時においては金利差が重要視されます。景気や政治などに不安材料がない時、為替取引ではリスク資産に資金が流入します。
米国の政策金利は主要国では最も金利が高く、2019年6月現在2.5%、日本の政策金利は-0.1%です自国通貨が超低金利であるわれわれが、ドル資産を保有することでスワップ(金利差)による収益を受け取ることができます。これが金利の高い通貨で取引する際の魅力です。
リーマンショック以前は豪州やニュージーランドの政策金利が7~8%もあったため、豪ドルやNZドル投資が人気となり上昇しました。しかし、今では豪州で1.25%、NZで1.5%まで政策金利は引き下げられており、それぞれ米ドルの金利を下回っているため人気が落ち込んでいます。
経済指標~労働市場とインフレ指標
金利を占う経済イベント、指標発表時には金利先物市場で金利が激しく変動します。これによって、為替市場でも通貨が大きく動きます。
米国の政策金利を決定する米連邦準備制度理事会(FRB)と連邦公開市場委員会(FOMC)は、連銀法によってデュアル・マンデートと呼ばれる「物価の安定」と「雇用の最大化」という、金融政策の運営にあたっての2つの法的使命を課せられています。
雇用が安定するように、景気を浮揚させる緩和策を取ることも重要ですが、インフレが加速しないよう引き締めることも重要です。よって、雇用とインフレに関連する経済指標のブレは、FRBの金融政策を変更、加速させる可能性があるとして市場の注目度が高く、予想と大きく異なる結果が発表されると金利やドルが大きく動くことがありますので、注目しておきましょう。
主な経済指標
・連邦公開市場委員会(FOMC):年8回開催
・雇用統計:毎月12日を含む週の雇用状況を調査し3週間後の金曜日(翌月の第一金曜日になることが多い)に発表される。
・消費者物価指数(CPI):消費者が購入するモノやサービスなどの物価の推移
・小売売上高:米国内で販売されている小売業・サービス業の売上高を集計
・PCEデフレータ:個人の消費支出の変動分のうち、物価変動によるものを除くための指数で、FRBが最も重視している物価指標とされる。
有事のドル買い
株式市場でも、取引量が多い銘柄は値段が飛ぶ(値段が大きく上下する)ことが比較的少ないため、指値注文でも約定しやすいのですが、取引量が少ない銘柄は希望の指値価格で約定しにくいというリスクを孕んでいます。
これは為替市場でも同じこと。新興国通貨の取引量は多くないため、価格変動が激しくなる傾向があります。
安全資産と言われる米ドルは、何か大きな事件が起こった場合でも取引できなくなるリスクが極めて小さいため、緊急時には世界のリスクマネーがドルに逃げ込む傾向があります。これを「有事のドル買い」と言いますが、これは圧倒的な取引量を誇る流動性から、通貨への信任が厚いことの表れでもあります。