今週の相場動向
相場回顧 BTC:BSV上場廃止の動きにより一時的に価格を下げるも週足では買い優勢
BTCは上昇基調の中、前週末にBithumb大幅業績赤字発表もあって価格を下げたが、BTC=56万円付近で押し目買いが入り反発上昇した。以降は買い優勢の展開が続き、4/15にBinanceのBitcoinSV(BSV)上場廃止発表をトリガーに再び価格を下げるも、すぐに価格を戻しBTC=59万円付近まで上昇した。
今週はBinanceをはじめとする取引所が相次いでBSV上場廃止を決定した。それによりBSVは価格を大きく下げたが、その間BSVの資金は主にBCH、BTCそしてフィアットに向かったと思われる。BCHが急騰する中BTCが遅れて価格を下げたことから、ポートフォリオとしてBCHに資金を寄せる動きも一時的に強まったか。BCHの上げが一服して間もなくBTCは価格を戻すと、ERCトークン関連の好材料を受けて急騰したETHが相場を後押しし、その後は緩やかな上昇を見せた。
BCHはBSV上場廃止の流れの中急騰し、週足では10%を超える大幅上昇となった。
Binance ChainのメインネットローンチがあったBinance Coin(BNB)とCoinbase上場発表があったAugur(REP)が強い動きを見せている。
今週のトピックス
- 米仮想通貨投資会社Arcaがデジタル証券発行の許可をSECに要請。(4/12)
- IMFと世界銀行が擬似仮想通貨「Learning Coin」の実証実験を開始。(4/13)
- 中国仮想通貨取引所Gate.ioがIEOで約30億ドルを資金調達。(4/14)
- マネーフォワードが仮想通貨関連事業への参入延期を決定。(4/15)
- 楽天ウォレットが新サイトを公開し口座申込の受付を開始。(4/15)
- BinanceがBitcoinSV(BSV)の上場廃止を正式に発表。(4/15)
- Coincheckが大口OTC取引サービスの対象通貨にETHとXRPを追加。(4/15)
- 交換業登録を目指しているFXcoinがSBIグループからの出資受け入れを発表。(4/15)
- LedgerX社が現物決済のBitcoin先物取引の提供を計画。(4/15)
- 英国大手旅行会社Corporate TravellerがBitcoin決済の受付を開始。(4/15)
- Nestlé、Carrefour、IBMが共同でマッシュポテト商品のブロックチェーン追跡実験を開始。(4/15)
- DeCurretが仮想通貨現物取引サービスの提供を開始。(4/16)
- マネックス証券がCoincheckとの連携を強化し仮想通貨取引の提供を検討。(4/16)
- SBI バーチャル・カレンシーズがBCHを上場廃止。(4/16)
- OKExがBitcoinSV(BSV)の上場継続を表明。(4/16)
- Bitcoin.com、Shapeshiftが相次ぎBitcoinSV(BSV)の上場廃止を表明。(4/16)
- 韓国大手通信会社KTがブロックチェーン基盤の5GシステムGiGA Chainを発表。(4/16)
- 金融庁が仮想通貨交換業者にコールドウォレット管理の徹底を要請。(4/16)
- アフガニスタンとチュニジア両国の中央銀行がBitcoinを利用した国債発行を検討。(4/17)
- 三菱UFJが米国のコンプライアンス技術会社Chainalysisに出資。(4/17)
- KrakenがBitcoinSV(BSV)の上場廃止を正式に発表。(4/17)
- Enterprise Ethereum Alliancが大企業と連携しトークン分類に向けたプロジェクトを開始。(4/17)
- Coinbaseが南米と東南アジアのサービス対象国を拡大。(4/17)
- Ripple投資部門Xpringが決済スタートアップBolt Labsに出資。(4/17)
- Binanceが独自ブロックチェーンBinance Chainのメインネットをローンチ。(4/18)
- CoinbaseがAugur (REP)の新規上場を発表。(4/18)
来週の相場予想
BTCはレンジ相場となるか。
海外の企業動向に加えて、国内においても楽天ウォレットやCoincheck、DeCurret、SBIといった取引所の動きが活発化しており、市場全体として上昇期待の持てる状況は変わらない。しかし、国内ではGWに入るとほとんどの取引所が日本円の入出金サービスを一時停止することから、来週はポートフォリオ整理の為の売りが一定数入り、上値の重い展開を予想する。取引高の増加も一服する中、価格を大きく崩すこともなく底堅い推移となるだろう。
直近下値としてBTC=56万円付近(5,000ドル)を意識し、BTC=60万円(5,500ドル)突破を目指す状況は変わらず。
来週のトピックス
- BinanceがBitcoinSV(BSV)を上場廃止。(4/22)
- GENESIS 2019がトロントで開催。(4/23-24)
- Basic Attention Token(BAT)がMilestone 0.63.xを実行予定。(4/23)
- BinanceがMatic Network (MATIC)のトークンセールを開催。(4/24-26)
- Blockchain Expo Global 2019がロンドンで開催。(4/25-26)
- World Blockchain Summitが台北で開催。(4/25-26)
業界関連動向
規制動向 中国マイニング禁止を計画か
4/11、フランスの議会が生命保険会社による仮想通貨の投資を認める法案を可決した、と地元メディアが報じた。これにより、フランスの生命保険会社は消費者に対して仮想通貨を運用ポートフォリオに加えた保険商品を提案できるようになる。フランスの生命保険業界の市場規模は200兆円を超えており、今回の法案可決による仮想通貨業界への影響は大きいとの声もある。
今回の法案可決により、 仮想通貨投資が一般に広がる可能性も高い。たとえ個人が直接仮想通貨に投資していなくても、仮想通貨が保険会社の商品として組み込まれることによって、間接的に市場に参加するようになる。そうなれば、一層相場も活気付くだろう。
マクロン大統領が起業家立国を目指しているように、フランスでは新興分野である仮想通貨・ブロックチェーンに関しても、慎重にではあるものの、企業に友好的なルール作りが進められている。今後、フランスにおいて機関投資家の業界間口がさらに広がれば、フランスが他国をリードして仮想通貨大国に名乗りを上げることも考えられる。
技術動向 ETH開発者らがアップデート期間の短縮を検討
4/12、ETHコア開発者たちの隔週会議において、ハードフォークの期間を短縮すべきかどうかが議論された。今回は最低期間をこれまでの6か月に対し3ヵ月とするかどうか が焦点となったが、これに対して内部でも賛否の声が上がっている。
賛成派は、小規模かつ頻繁にアップデートを行うことで毎回の変更点が分かりやすくなり、実装も容易になると主張している。反対派は、期間が短くなればセキュリティ評価の時間が十分ではなく、実装に伴うバグの発生やユーザー負担の増加が懸念されると述べている。現状の6ヵ月という期間でもアップデートを定期的に完了することができていない為、実際に更新期間を短くするには一部プロセスを自動化する必要があるとの意見も挙げられた。
3月に行われた大型アップデートの際にも、その前には脆弱性の発見により何度も延期された。ハードフォークを頻繁に行うことで着実に開発を進めていく狙いはわかるが、それによって開発がさらに遅延しては本末転倒である。EOSをはじめとする同様のDappsプラットフォームの台頭によって、ETHのこれまでの立場が脅かされているだけに、この判断がETHコミュニティの行方を大きく左右すると言えそうだ。
個別企業動向 SBIバーチャル・カレンシーズがBitcoin ABC(BCH)の上場廃止を決定
4/16、国内取引所SBIバーチャル・カレンシーズ(以下SBI)はBitcoin ABC(BCH)の上場廃止を決定した。廃止日時は6月下旬を予定している。
SBIは取扱い廃止の理由を「顧客の便益を高める金融サービスを提供するという当社グループの経営理念からは乖離した状況にあり、また、投資家保護の観点に照らし、継続して取扱うべきではないと判断した」と述べており、以下の三点を具体的要因として挙げている。
・BCH の時価総額が大幅に減少したこと
・その結果、51%攻撃の懸念が高まっており、ブロックチェーンの安全性に疑義が生じていること
・さらなるハードフォークが行われ、価格が大きく下落する可能性を完全には否定できないこと
他方、今週はBinanceやShapeshift、Krakenといった取引所が相次いでBitcoin SV(BSV)の上場廃止を決定する動きが見られた。
BCHとBSVは、もともとBitcoin Cashコミュニティ内で開発方針を巡る意見の対立が生じ、2018年11月にハードフォークする形で誕生した。BSVについては、コミュニティを主導するCraig Wright氏の自己中心的な言動が以前より問題視されており、今後BSV上場廃止の動きはさらに拡大することも考えられる。日本国内の取引所は、これまでBitcoin Cashハードフォークへの対応について様子見を続けていたが、最近になってその多くがハードフォーク時のBSV付与を日本円建てで行うと発表している。
かつてECや店舗での決済通貨を目指したBitcoinCashコミュニティは、昨年11月以降BCHもBSVも方向性を見失っている。同じ目標を目指す中で意見が対立し分裂したのなら仕方がないが、それによりどちらも本来の目標を見失っては一体何の為のハードフォークだったのかがわからない。共倒れにならない為にも、双方のポリシーの明確化が求められている。
コラム なぜ仮想通貨・ブロックチェーンは他のフィンテック領域に比べて理解が難しいのか
フィンテックという「金融×テクノロジー」によって生まれた造語は、ビットコインが世間に認知されるもっと前から存在した。その時から海外と比べた時の日本人の金融そしてITリテラシーの低さは問題視されていたが、仮想通貨・ブロックチェーン業界ではそれがより顕著に表れている気がする。フィンテック領域が様々ある中で、なぜ仮想通貨・ブロックチェーンは世間の人にとって特に理解が難しいのか。
第一に、イメージのしづらさが挙げられる。テクノロジーに関して全く無知な人が「AI」と聞くと、おそらく多くの人が人工ロボットを思い浮かべるだろう。映画になるくらいにその印象は強い。では、「IoT」の場合はどうか。Internet of Thingsと聞けば、おそらく大半の人が何かモノがインターネットと繋がっている状態を想像する。そして、これらはイメージと実際の乖離が小さい。しかし、「仮想通貨」「ブロックチェーン」の場合は、言葉を聞いても一体それが何なのかがまるでわからない。仮想空間の通貨?何かブロックが繋がっているの?周りの友人からよく言われるフレーズだが、どちらも的外れだ。
第二に、ブロックチェーン技術そのものが金融的側面を持つということだ。上述したAIやIoTの他にも、決済分野におけるNFCやQRコード、個人間取引を実現するP2Pなど金融に応用される技術は様々あるが、共通することとして、これらはあくまで既存のお金を使ったアクトを効率化する為の補完技術にすぎない。つまり、お金ありきの技術であり、技術の上で価値の変動が起きることがない。一方で、ブロックチェーン技術はあらゆる価値の保存・移転を可能にするだけでなく、その上では価値の変動までもがプログラムに従って起きる。つまり、誇張すれば技術そのものが金融色を帯びていると言える。
第三に、仮想通貨を決済通貨あるいは金融商品といった金融物として捉えようにも、テクノロジーを無視して考えることができないことだ。仮想通貨の発行量や発行上限、発行条件、取引ルールは全てプログラムによって規定されている。今やそのルール変更プロセスまでもがプログラム化されようとしている時代だ。一部の限られた人間の判断によって変更が加えられる伝統的金融の視座では、仮想通貨を正しく理解することができないのは言うまでもない。確かに市場で取引される仮想通貨は需給に応じて価格が変動し、金融物であると言えるかもしれない。しかし、それは人ではなくテクノロジーによって支えられている。
第二、第三の理由は表裏一体である。ここで言いたかったことは、仮想通貨・ブロックチェーンはこれまでのフィンテックと違って真の意味で金融とIT知識が求められるということだ。冷静に考えて、どちらの素養も持ち合わせる人材はそう多くはない。ITに興味ある金融人か金融に興味あるギーク、そして最も潜在層が多いと思われるのがITへの抵抗が薄いデジタルネイティブ世代である。この業界で多くの若手が活躍しているのが納得できる。これから先、既存の金融市場に接続する形で業界は発展していくだろうが、それによって日本もテクノロジーフレンドリーな社会になることを願っている。アメリカや欧州と違って規制先行型であるところを見ると、やはり日本はまだまだ古い金融文化的か。
編集校正:マネックス仮想通貨研究所