◆さあ、いよいよだ。言うまでもなく、あと2時間あまりに迫った新しい元号の発表である。11時半ごろに菅官房長官が墨書を掲げて公表するという。続いて正午ごろに安倍首相が記者会見して談話を発表する。墨書を掲げて公表するのは「平成」発表の時と同じだが、官房長官と首相の会見の模様はツイッター、フェイスブック、ユーチューブなどSNSで配信されるというところがイマドキらしい。
◆発表のタイミングが絶妙だ。4月1日は新年度のスタート。どれだけ多くのひとが今日から新しい生活を始めるのだろう。学校に入学したり、新社会人となって働き始めたり。同じ学校でも学年が替わり、クラスが変わる。職場でも異動になって部署や役割が変わったひとも多いだろう。新年度のスタートにあたり、多くのひとが新しい環境を迎える中、新元号が発表される。日本中がこのうえない「リフレッシュ感」に満たされるだろう。折しも、桜が満開だ。否が応でも別れと出会いに思いは馳せる。平成に別れを告げて、新しい時代を迎えるのである。
◆少し心配なのは、発表前に「新しい元号は○○」という流言が飛び交うことだ。今回はご存命中の天皇陛下の退位に伴う改元だから自粛ムードはなく、早い時期から新元号の予想が至るところで行われてきた。それはかまわないのだが、今日は4月1日、エイプリルフールである。普段は戯れ言など言わない人も、今日ばかりは冗談半分に軽口を言うかもしれない。その中にはきっと、「新しい元号は○○に決まったんだって!」というウソが多くあるに違いない。非常に多くの「新しい元号は○○」が世間のひとの口の端に上れば、なかにはまったくの偶然で言い当ててしまうものもあるだろう。嘘から出た誠ということもある。
◆それが政府の耳に入ったらどうなるか。なにしろ今回の改元に当たっては超厳戒態勢。官邸内の植木に盗聴器などが設置されていないかも確認するほどだ。政府は有識者や正副議長、閣僚らに対し、新元号案を示す部屋に携帯電話など情報機器は持ち込まず、発表まで室内待機を求める。トイレに行くにも職員を随行させる念の入れようだ。公表前に報道されれば差し替えを検討するという。
◆そんなピリピリした状態のなか、エイプリルフールでついたウソが偶々「本命」を言い当ててしまい、それがSNSなどで拡散し、事前に情報漏洩していたと話題になる。ウソに尾ひれ背びれがついて、関係者が処分を受けたり…なんていうのは心配しすぎか。
◆ところで巷の新元号予想のトップは「安久」だそうだ。そうであれば、「安久」が選ばれる確率は限りなく低い。この世の中に絶対はないが、ほぼ絶対に選ばれないだろう。「安久」は「女子高生に尋ねた新元号」というアンケートでも1位だった。ちなみに女子高生の5位には「嵐」が入った。この世の中に絶対はないが、こちらは、絶対にない、と言える。