今週の相場動向
相場回顧 BTC:価格を下げる場面は見られるもLTCやBNBの高騰を受けて持ち直す展開
BTCはXRPの強い動きに連れ高し週初緩やかな上昇基調となっていたが、株式市場下落によるリスク回避の動きやETHの売り圧が影響し、売りが強まってBTC=41万円付近まで下落した。
その後、LTCやBNBの高騰もあってBTC=43万円付近まで価格を戻し、週足では横ばいとなった。その他、機関投資家向け仮想通貨取引所LGO Marketsのサービス開始といった買い材料も見られた。
XRPはCoinbaseがプロトレーダーだけではなく一般投資家向けにもXRP取引を提供すると発表したことで一時的に買いが強まったが、その後は上値が重く週足ではBTC建てで横ばいとなった。
LTCは3/5に急騰すると買いが買いを呼んでさらに上昇。週足ではBTC建てで20%近い大幅上昇となった。この急騰については、ベネズエラ政府がBTCとLTCを用いた国際送金サービスを始めたことが影響したとの見方が強い。その他、テクニカル要因が大きいとの見方もある。いずれにせよ、LTCはLightningNetwork実装や匿名性向上への期待もあって12月以降BTC建てで上昇を続けている。
BNBはBinanceが過去2回大盛況となったトークンセールの第3弾の詳細を発表したことや、DEXテストネットの利用キャンペーンが開始されたことで、買いが集中し大きく価格を伸ばした。週足ではBTC建てで40%近い大幅上昇となっている。
今週のトピックス
- ETH、Constantinopleハードフォークを無事実装。(3/1)
- CoinbaseがXRP取引を一般投資家向けにも提供。(3/1)
- ETH開発者らがハードフォークコーディネーターの必要性について議論。(3/1)
- 楽天ウォレット株式会社が社名変更に伴い増資を発表。(3/1)
- 大手小売カルフールが乳製品の流通追跡にブロックチェーンを活用。(3/1)
- スイス企業3社が国内初のブロックチェーンを活用した不動産取引を完了。(3/1)
- 機関投資家向け仮想通貨取引所LGO Marketsがサービス開始。(3/4)
- Circleがクラウドファンディング事業を手掛けるSeedInvestを買収。(3/4)
- TRONとTetherがTRONベースのUSDT発行に向け提携。(3/4)
- TradingviewがHuobi提供の仮想通貨インデックスHB10をリストに追加。(3/4)
- Ernst&Young EYが仮想通貨の会計税務ツールを発表。(3/4)
- ベネズエラ政府がBTCとLTCを用いた国際送金サービスを開始。(3/5)
- スイス証券取引所がETH連動のETP取扱いを開始。(3/5)
- ロシアの仮想通貨関連法案が第二読会で採択。(3/5)
- 株式会社クリプタクトが仮想通貨オプション販売会社の株式会社Protoptionを設立。(3/5)
- OperaがiOS版の仮想通貨ウォレット内臓ブラウザの提供に向け準備。(3/5)
- Binanceがトークンセール第3弾の詳細を発表。(3/5)
- 韓国最高検察庁が仮想通貨詐欺防止の為のタスクフォースを設立。(3/5)
- HuobiがOTCプラットフォームでXRPの取扱いを開始。(3/6)
- SWIFTがブロックチェーンを活用した電子投票の実証実験を開始。(3/6)
- SBIバーチャル・カレンシーズが板取引の提供を延期。(3/6)
- Mercury-FXがx-Rapidを用いたフィリピン建て送金の商業利用に成功。(3/6)
- アルゼンチン政府とBinance Labが同国内のブロックチェーン企業支援で協力。(3/6)
- Binance DEXテストネットの利用キャンペーンが開始。(3/7)
- 投資プラットフォームeToroが仮想通貨取引の提供を開始。(3/7)
- タイ石油会社BCPがブロックチェーンを活用したエネルギー取引の実証実験を開始。(3/7)
来週の相場予想
来週の相場予想
BTCは上値の重い展開となるか。
市場センチメントはこの1ヵ月で改善傾向にあり相場は底堅く推移しているが、上昇基調を強めるには目立った材料に乏しい。このような中では、ここ数週間のように比較的ボラティリティの高いアルトコイン主導の動きになることが予想される。しかし、その影響はBTCの価格トレンドを決定付けるには弱く、市場全体として材料待ちの状態が続くと思われる。
引き続き直近上値としてBTC=44万円、下値としてBTC=41万円を意識。
来週のトピックス
- Asia Crypto Weekが香港で開幕。(3/11-17)
- CBOE先物XBTH19最終取引日。(3/13)
- Token2049が香港で開催。(3/13-14)
- THETAがメインネットローンチ予定。(3/15)
業界関連動向
規制動向 仮想通貨業界もFATFの審査対象に
3/4、マネーロンダリングに関する金融活動作業部会(FATF)の対日審査を今秋に控え金融業界が対応に追われていると、ダイヤモンド社が報じた。前回(2008年)とは違い、今回は仮想通貨業界もその例外ではない。
先月にFATFは仮想通貨関連事業に対するライセンスの必要性などを含む、仮想通貨規制に関する草案を公式に発表した。
FATFが公開している『The FATF Recommendations』は、マネーロンダリングやテロ資金供与に対抗するための世界的な措置の枠組みを定めるために、2012年に公開されてから更新が重ね続けられている国際基準としての勧告である。2018年10月には、第15項にあたるNew technologiesの項に仮想通貨に関する記述が追加された。今回の草案は、この第15項の解釈を示すInterpretive Noteであり、仮想通貨を通したマネーロンダリングやテロ資金供与のリスクに対する国の規制や監視の行動指針が示されている。
この草案は、一部修正される可能性はあるが、2019年6月にFATFの公式文章として最終決定される予定とされている。その内容がどうなるにせよ、国内主要の仮想通貨企業は十分な対策が必要と言えそうだ。
技術動向 Blockstream社がc-lightning v0.7をリリース
3/1、米国を拠点にブロックチェーンの技術開発を手掛けるBlockstream社がc-lightning v0.7をリリースした。
c-lightningは、C言語で書かれた、ビットコインのスケーラビリティ問題を改善するLightning Network技術(LN)のモジュールであり、Github上にコードが公開されている。開発者は公開コードを利用することで、ノード運営やLNを用いたアプリケーション(Lapps)開発をスムーズに行うことができる。
今回のアップデートの主な改善点はプラグイン機能が追加されたことである。これにより、開発者は任意の言語で独自の機能をc-lightningに追加し、より柔軟に開発を進めることが可能となる。その他、非公開チャネル経由での支払いの送受信を可能にするRouteboost機能の追加やバグの修正などが行われた。
マイクロペイメントが発生する場面では特にLNの応用が検討されており、最近でもピザの購入やTwitterの投げ銭にLNを活用する事例が見られた。c-lightningのようなツールの拡充が進めば、ブロックチェーンが社会実装される日も近くなるだろう。
個別企業動向 国内仮想通貨取引所が相次ぎ証券業参入への動き
3/5、QUOINEやbitbank、BITPointら国内仮想通貨取引所が相次ぎ証券業への参入を目指していると日経新聞が報じた。
報道によれば、仮想通貨の一部業務が現在の改正資金決済法から金融商品取引法(金商法)の規制対象となることを見越して、各社対応に動いているという。証券業務を行うには仮想通貨交換業と同様に金融庁への登録が必要であり、QUIONEとbitbankは年内にも申請、BITPointはグループ子会社を通して年内の業務開始を目指している。
最近では、米国を中心にICO(トークン発行)に代わるSTO(証券型トークンの発行)の議論が過熱しており、各国規制環境は整っていないものの、STOを行うに当たっては証券法での規制が適切との見方が支配的となっている。日本もまた仮想通貨を金商法で規制する方向に向かうと大方予想されており、今回の報道はこのような業界の流れを受けたものである。
仮想通貨交換業者が証券業参入を目指す動きが先行しているが、STO環境の整備が進めば、その逆の動きもまた増えてくるだろう。仮想通貨業界と証券業界とが今後どのように相互作用するか注目である。
コラム 私たちは仮想通貨・ブロックチェーンで何を失い、何を喚起されるのか
テクノロジー、それは世の中を便利にする魔法である。私たちは新しい魔法を次々と生み出すことによってこれまでも世界を大きく変えてきた。しかし、時としてそれらの魔法は私たちから大切な何かを無意識のうちに奪い去る。魔法の世界に浸るあまり、私たちは本来価値を置いていたものを見失ってしまうのだ。そして最後、私たちはふとした時に魔法から覚める。やっぱり○○は大切なのだ、と。
過去を振り返っても、私たちの歴史はこのことの繰り返しであることがわかる。まず初めに、蒸気機関が完成されてからはあらゆるものが人力から動力へと置き換わり、産業の機械化そして家事の機械化が進んだ。これによって私たちの作業負担は大幅に削減され、生産効率もまた大幅に向上した。しかし、現代に入り機械が当たり前の時代になると、かつては機械をコントロールしていた私たちが、機械によって支配されていることに気づく。今の時代では個人であっても企業であっても機械に頼ることなく生きていくことは難しい。だからこそ、人力の必要な、人にしかできないことが見直されつつある。また、機械の使用によって地球環境が悪化していることにも私たちは気づいている。これは言うまでもない。やっぱり私たちの住む地球は大切なのだ。
次に、インターネットが登場して以降、私たちは世界中いつどこにいても誰かとコミュニケーションが取れるようになった。また、本やレコードを手にとらずに情報を得ることや、さらにSNSの発展もあって、今では自由に情報を発信することもできる。確かにマクロに見れば、インターネットの普及によって人と人、人とモノ、国同士の壁は解消されたかもしれない。しかし、ミクロに見た時にはそれらの壁はむしろ大きくなっていることに気づく。インターネットの便利さゆえに直接人と会って話す時間、直接何かを手に取って五感に触れる時間は過去に比べて圧倒的に減っている。それが国家元首同士の対談であっても、それが世界に発信されるとわかっているからか、議論というよりPRの場という性質が強まって国同士の距離が一向に縮まらない。そんな時代ではあるが、少しずつ私たちはリアルな体験の価値を思い出しつつある。やっぱり直接的な感覚は大切なのだ。
そして、これらの先に私たちを待ち受けるのは仮想通貨・ブロックチェーンが浸透した未来である。この時にどう世の中が便利になっているのかは現時点では全くわからない。もしかしたら、ビットコインが世界共通通貨となり、あらゆる価値のやりとりが世界中の人とP2Pで即時にできるのかもしれない。トークンエコノミーで企業に勤めずとも対価が得られる社会ができているのかもしれない。どんな未来になるにせよ、それが当たり前のものになった時には、機械による人間の奴隷化やインターネットによる人間の非リアル化が起きた時のように、私たちは大切な何かを無意識のうちに見失うことになるだろう。それが国や企業そして人への信頼なのかはわからないが、行く末におそらく気づくのだ。やっぱり信頼の置ける法定通貨、中央管理体は大切なのだ、と。
編集校正:マネックス仮想通貨研究所