これほどに注目度が高かった中間選挙も記憶にありませんが、このコラム執筆時はまだ投票前。2年前の大統領選挙でのトランプ大統領誕生や、英国国民投票でのブレグジット選択など、事前予想がいかに当てにならないかは思い知らされていますので、どのような結果になるか事前に予想しても意味がありません。今日は選挙や金融政策、経済指標発表前のコンセンサスと結果のギャップが価格変動の源泉であるというお話し。
※コンセンサス=市場予想の平均値、マーケット関係者の大勢の予想
結論から言うと、今回の中間選挙では2年前の大統領選挙の時ほど金融市場全般の値動きが大きくなることはないと思われます。今回は2年前の大統領選挙の時の教訓から、あらゆる可能性を想定しておこうという向きが多いためです。
では、大統領選挙を振り返ってみましょう。
トランプ大統領誕生はあり得ないというのが市場のコンセンサスでしたが、実際にはトランプ大統領が選出されてしまいました。また、トランプ大統領誕生となれば米国の成長は終わり株もドルも大きく売られるというコンセンサスが醸成されていたのにです。これが予想と事実のギャップでした。
実際、トランプ大統領の当確が出た東京時間では日本株が大きく売り込まれました。ドル/円相場は105円台で推移していましたが、当確が出ると101円台まで円高が進行しました。初動こそ市場のコンセンサス通りに下落したのですが、その後欧州時間から猛烈に巻き返しが始まり、ドル/円相場は12月5日にかけて118円台まで駆け上がりました。東京時間の値動きが典型的な「騙し」となった格好です。
なぜこのようなことが起こったのでしょうか。これは事前にトランプ大統領が掲げる公約が、経済にどのような影響をもたらすかを織り込んでいなかった、想定していなかったことにあります。
あり得ないことが起こった、これで米国の成長は終わりだ、と考えるのはあまりに短絡的です。公約に掲げた大型減税が好景気をさらに引き延ばす可能性、そして減税による恩恵は企業の自社株買いにつながるというところまで、東京時間に想定する向きがなかったということでしょう。
今回の市場のコンセンサスは、上院が共和党、下院が民主党という予想が80%を超えていますが、下院が民主党となれば議会がねじれるため、トランプ大統領の政策は通りにくくなります。このコンセンサスを事前に織り込む形で10月に米国株市場が下がったとみることもできます。ですから、結果がその通りになったとしてもサプライズではないため、2年前の大統領選挙の時のような猛烈なトレンドが起きるとは考えにくいと思われます。
共和党が上下院を制するケースは、現状と変わらないわけですからマーケットへのインパクトは大きくありません。最も可能性の低いシナリオとしては、上下院とも民主党が制するというものですが、このケースの想定はあまりなされていないため、金融市場への影響が最も大きくなると考えられます。
事前の予想と結果のギャップは、選挙だけでなく、金融政策や経済指標の発表でも確認できますが、事前予想を織り込む形で先にマーケットが動いてしまっている場合は、その衝撃はあまり大きくなりません。
事前予想通りの結果が出れば、先に動いていた市場は「材料出尽くし」として売り方は買い戻しを入れ、買い方は利食いの手仕舞いを入れます。「事前予想の織り込み」が起こっていた場合は、とてもいい結果だったのに下がってしまう、悪い結果だったのに上昇を始める、というような不可思議な動きを誘発します。
今回の中間選挙は、事前に米国株や日本株市場は大きく下がっていた、ということがポイントです。上下院ともに民主党が制するという波乱がない限り、発表直後の乱高下はあっても、大きなトレンドが発生するということはないと考えています。