「貯蓄をしたい」「投資をしたい」、そういったご相談を毎日何人もの方から受けるのですが、貯蓄をするにも、投資をするにも、「生活費以外にそれらに充てられるお金がしっかりあるか」がものを言います。つまり、大切なのは収入と支出から、しっかりプラスの差分が出ていることが重要なのです。

よく「節約はしているつもりなのですが、これ以上どうするとよいのかがわかりません」という方がいます。節約は闇雲に頑張っていてもうまくいきませんし、時には空回りしてしまうこともあります。よくわかりますがそれは、自分のお金の使い方に「軸」がないときに起こり得ることなのです。その軸というのは、その人その人それぞれの「価値観」によってできるもので、言わば「自分軸」にあたるものです。

お金の使い方の軸を作るためには、自分の価値観を育てることが何より大切。そのためには、支出一つ一つの意味を考えるという作業が効果的です。金額でどうこうというよりも、価値での基準で捉えるのです。その訓練の1つに、私が以前からお伝えしている、支出を「消費」「浪費」「投資」の3つに分ける、「家計の三分法」というもので取り組むと、使い方の価値基準となり効果があがりやすくなります。

この家計の三分法は、まず、支出を費目ではなく、3つの意味で分けます。
一つ目の「消費」。生きるため、生活するために欠かせない支出です。過剰ではない食費、水道光熱の利用料金、スマートフォンの利用料金などがこれにあたります。
二つ目は「浪費」。生産性がないのが良いか悪いかは別として、いわゆる無駄遣いのお金です。ギャンブルや過剰な嗜好品代、借金の利息、不用意にかかる手数料や年会費などが当てはまりまるでしょう。浪費と意識して使うお金も、ここに当てはまります。
三つ目は「投資」。預貯金や金融商品としての投資だけではなく、自己投資もここに入ります。自分に返ってくる使い方です。ですから、将来仕事の幅を広げるための通信教育代や、書籍・参考書代、セミナー代も入りますが、あくまで自分の将来に役立つと思われるものです。

この家計の三分法、たった3つに分けるだけですが、意外と難しい部分があります。たとえば、投資。自分のために自己啓発セミナーに複数回通っていたとします。それのすべてを理解し、自分のものとしてどれだけ行動に移せたのか、単純にセミナーに行ったという事実だけに満足してはいないかなど、支出とその仕分けの妥当性をきちんと振り返る必要があるのです。その結果、本当の意味での投資は、投資に振り分けた分の1/3で、残る2/3は「参加する」ということが目的だったということが分かるかもしれません。そうなると、その2/3の部分は、浪費だったと判断できます。今のように割合で細かく見るようにしなくても、実際は、投資のつもりが浪費だったなどと、お金の使い方を大きく振り返ることが本当の狙いです。

ですから消費だと思ってたくさん買いだめしていた食材。使い切る前に半分腐らせてしまった、使わなかったとなると、それはもはや浪費です。買い物の仕方、食材の使い方に計画性がなかったことが反省できます。

このような振り返りを繰り返していると、「いま買おうとしているものは、本当に消費なのだろうか?」などと考える習慣ができます。そこで「きちんと消費する」という計画を思い浮かべ購入していれば、きちんとした消費ができるでしょう。ちょっと上級者的になりますが、買うときにあえて「浪費だけどいいや」と認識した上でのあえての浪費であれば、それはそれでよい浪費でしょう。怖いのは、浪費だという認識がないままに浪費をしている状態なのですから。また、逆によく考えてみると浪費だから買うのをやめようということにもなり得ます。

つまり、お金を出すべきところにはしっかりと出し、出さなくてよいと思えることにはお金をかけない、そんなメリハリのついたやりくりができるようになるのです。それは自分軸ができたということであり、ゴールなのです。このようにして、自分のお金の使い方を考えていけることが自分の価値観の形成となり、非常に大切なことなのです。

よく投資を始めると、お金の関心が湧く、家計にも関心が湧くということがあります。本当に心からお金や家計に興味が持てると、自然とここにいきつくと思われます。自分なりに無駄のない、意味のある支出をしよう!そう自ら思うようになるのです。
投資の元手になる資金をいかに自分の手元の今の家計のお金から作るか、そういうことを考えるからです。投資の原資をどうつくるかを考えるようになるということです。

それは、家計の中から貯蓄するお金をいかにつくるかということと、話は同じなのです。

前回お伝えした「今を把握する」ということから、家計の三分法を使い客観的に自分のお金の使い方を振り返ることで、お金の自分軸も作られるでしょうし、支出自体も変わってきます。強い投資のため、揺るぎなく継続するための大事な絶対条件が、自分なりのお金の使い方を意識することなのです。

コラム執筆:横山光昭(よこやま・みつあき)

個別の家計相談でお金の使い方から家計を改善する マイエフピー
お金の悩みが相談でき、学べる店舗を展開する mirai talk株式会社

(外部サイトへ移動します。)