AIが示した予想を使う上で大切なこと

AIは万能か?高度な情報処理能力と未来予測の難しさ

AIは、私たちの仕事や生活を大きく変えつつあります。人間なら多くの時間を要する調べものや、大量の文章から必要な情報を整理する作業、わかりやすい文章の作成などを、短時間でこなしてくれます。人間がこれまで行ってきた仕事を、AIが短時間で、できる限り質の高い形に仕上げてくれることは、大きな魅力といえるでしょう。

一方、未来を予測するとなると話は別です。AIは過去のデータや現在入手できる情報をもとに、将来の見通しとその根拠を示してくれます。しかし、大量の情報を処理する能力と、まだ起きていない出来事を正確に予測する能力は、必ずしも同じではありません。

AI予測の現在地:専門家との比較研究が示す「限界」と相場予測のリアル

実際、こうしたAIの予測能力を検証した研究もあります。2025年にカルガーらの研究チームが発表した研究「フォーキャストベンチ(ForecastBench)」では、AIと人間による将来の出来事の予測精度を比較しています。その結果、将来予測に優れた能力を持つ人間の専門家(スーパーフォアキャスターなど)のグループは、ChatGPTなどに使われている生成AIの技術である大規模言語モデル(LLM)のうち、当時の最高性能のモデルを、統計的に有意な差で上回りました。

この研究は株価予測に限定したものではありませんが、AIがあらゆる未来予測で人間を上回るわけではないことを示す興味深い事例です。

特に株式市場では、予想した時点では合理的な見通しであっても、その後に新たな経済指標や企業業績、政策変更などが明らかになれば、株価の方向性は大きく変わります。これはAIに限らず、人間の専門家にも共通する予測の難しさです。

AIによる株価予想も、その特徴や限界を理解しながら利用することで、投資判断の参考となる情報が得られるでしょう。大切なのは、AIが示した予想をそのまま受け入れるのではなく、どのように読み解き、活用するかという点です。

そこで今回は、皆さんにも身近なAIを使って日経平均株価を予想する実践例を紹介しながら、AI予想との上手な付き合い方を解説したいと思います。

ChatGPTで日経平均を予想!回答の「ゆらぎ」を活用する方法

今回の予測には、皆さんにも身近なChatGPTを使います。具体的には、毎週、週初めの月曜日の朝8時(月曜日が休日の場合は翌火曜日の朝8時)に、直前の金曜日の日経平均株価の終値をChatGPTに伝え、その週末の金曜日と翌週末の金曜日の日経平均株価を予想してもらいます。

その際、ChatGPTには株式市場の専門家であるストラテジストの立場で、最近の株価の動きや経済ニュース、今後予定されている重要なイベントなどを調べたうえで予想するように依頼します。そして、それぞれの金曜日の日経平均株価が、基準となる直前の金曜日から何円上がるか、あるいは下がるかという「予想騰落幅」と、「予想終値」を示してもらいます。

実際にChatGPTに問いかける文章は、文末の参考欄に示しました。

直近のAI株価予想:下落予想の根拠と回答の「ゆらぎ」

直近では、2026年10月19日(月)の朝8時にChatGPTを使って予想を行いました。基準としたのは、直前の10月16日(金)の日経平均株価の終値6万5,324.29円です。これに対して、10月23日(金)の終値がどうなるかを尋ねたところ、最初の回答は次のようになりました。

「10月23日の日経平均株価は6万5,200円程度と予想します。10月16日の終値と比べて約124円の下落です」

予想の主な根拠として挙げられたのは、半導体関連株の売りが一巡するとの見方です。相場全体としては下げ止まり、その後は反発に向かう展開を想定していました。ただし、週末時点の株価については、前週末をやや下回る水準を予想したことになります。

生成AIの特徴の1つは、同じ質問を繰り返しても、同じ回答ではなく、回答にばらつきが生じることです。株価予想についても、同じ条件で質問しているにもかかわらず、異なる予想値が示されます。こうした回答のばらつきは、生成AIの「ゆらぎ」と呼ばれることがあります。生成AIは回答を作る際に確率的な仕組みを利用しているため、同じ質問でも回答に違いが生じるのです。

10回の予想から見えてくる株価の見通しと市場センチメント

そのため、AIの予想を利用する際には、1回の回答だけで判断するのではなく、経験的に少なくとも10回程度は同じ質問を繰り返し、複数の予想結果を比較することが重要だと考えています。これは、AIの回答の「ゆらぎ」を積極的に活用するためです。人間に例えると、10人のストラテジストに同じ質問をして、それぞれの予想を集めるようなものです。

10回の予想結果をどう使う?「平均値」と「センチメント」2つの活用法

こうして得られた10回の予想結果には、2つの活用方法があります。1つ目は、予想終値の平均値を週末の日経平均株価の予想値として利用することです。2つ目は、10回のうち株価の上昇を予想した割合に注目することです。この割合を、AIの回答に表れた市場センチメント(投資家心理)を捉える指標として利用します。例えば、上昇予想の割合が80%なら強気の見方が優勢、20%なら弱気の見方が優勢、50%なら強気と弱気が拮抗していると判断します。

そこで同じ質問を10回繰り返しました。図表1は、その予想結果をまとめたものです。同じ条件で質問しているにもかかわらず、10月23日(金)の日経平均株価の予想終値は、最も高い6万7,600円から最も低い6万2,300円まで、幅広い結果となりました。予想の根拠についても、企業業績への期待や半導体関連株の反発を挙げる回答がある一方、米国の金利上昇や中東情勢への警戒を挙げる回答もあり、AIの回答の「ゆらぎ」が表れています。

【図表1】ChatGPTによる日経平均株価の10回予想結果:例(2026年10月19日実施)
注: 2026年10月19日(月曜日)午前8時に、ChatGPTに同じ条件で10回の日経平均株価予想を依頼した結果。基準となる株価は10月16日(金曜日)の終値6万5,324.29円。予想騰落幅は同終値との差額。予想終値の平均値は10回の単純平均。上昇予想の割合は、予想騰落幅がプラスとなった回答数を10回で除して算出した。相場イメージと理由は、各回答の要点を整理したもの。 出所:ChatGPTによる予想結果をもとにマネックス証券作成

AIの「ゆらぎ」を活用することで把握できること

10回の予想終値を平均すると6万5,210円となり、前週末の終値6万5,324.29円から約114円の下落予想でした。

一方、上昇を予想した回答は10回中5回で、上昇予想の割合は50%でした。つまり、平均値では小幅な下落が予想されたものの、AIの回答から捉えた市場センチメントは、強気と弱気が拮抗する中立的な結果となりました。

このように、AIの回答の「ゆらぎ」を積極的に活用することで、週末の株価水準を予想するだけでなく、AIの見通しに表れた市場センチメントも把握できるのです。

AIの株価予想はどこまで当たる?過去のデータで検証

このように得られた予想終値の平均値と市場センチメントが、実際の株価の動きをどの程度捉えられたのかを検証しました。

直近8週間の検証:的中率は8割超と高い有効性を確認

検証対象は、2026年8月24日から始まる週以降の10月13日の週までの8週間です。まず、予想終値の平均値から判断した株価の上昇・下落の方向が、実際の週末の株価の動きと一致したかを調べました。その結果、8週間のうち7週間で方向が一致し、的中率は87.5%となりました。

・市場センチメントの的中率は85.7%、一定の有効性があるか

次に、市場センチメントについても検証しました。10回の予想のうち、上昇予想の割合が50%を超えれば上昇、50%を下回れば下落と判断します。50%の場合は強気と弱気が拮抗する中立とし、方向の判定から除外しました。

その結果、方向を判定できた7週間のうち6週間で実際の株価の方向と一致し、的中率は85.7%となりました。いずれも8割を超える的中率となり、今回の検証期間では、AIの予想終値の平均値だけでなく、回答の「ゆらぎ」を利用した市場センチメントも、株価の方向性を捉えるうえで一定の有効性がうかがえる結果となりました。ただし、検証期間はまだ短く、今後も継続して予測精度を確認していく必要があります。

過去41週間のシミュレーション検証:事後分析による一致率は5割台

さらに長い期間でも同様の結果が得られるのかを確かめるため、過去にさかのぼった検証も試みました。

・前提条件も含めてChatGPTに指示することが重要

ただし、ここには注意すべき点があります。過去のある時点に戻ってChatGPTに予想を求めても、現在のChatGPTは、その後に起きた株価の動きや経済ニュースなどを知っている可能性があります。そのため、過去の時点で実際に予想を行った場合と、後から当時の状況を想定して予想する場合とでは、条件が異なります。

そこで、ChatGPTへの質問文には、予想を行う日付を明確に指定し、その時点までに公表されていた情報だけを使って予想するように指示しました。また、それ以降に判明した株価の動きや経済指標、企業業績などを予想の根拠に含めないよう、注意事項も加えました。

・過去41週間の参考分析:株価方向の一致率は56.1%

今回は、2026年1月5日から10月13日までの41週間を対象に、過去の各時点を想定した予想データを作成し、検証を行いました。ただし、今回のデータには、実際にChatGPTに質問して得られた予想とは別に、一定のルールに基づいて事後的に作成した参考シナリオが含まれています。また、実際の予想と参考シナリオでは、同じ期間でも予想結果が異なっています。

そのため、今回の検証は、ChatGPTが当時実際に行った予想の精度をそのまま検証したものではなく、過去の株価の動きと予想データを比較する参考分析として位置づけています。この参考となる予想結果を使って、週末の日経平均株価の上昇・下落の方向が実際の動きと一致したかを調べました。その結果、予想騰落幅の平均値を使った場合、41週間のうち23週間で方向が一致し、一致率は56.1%となりました。

・過去41週間の参考分析:市場センチメントの一致率は52.4%

一方、市場センチメントについては、上昇予想の割合が50%だった20週間を中立として除外し、残る21週間を対象に検証しました。その結果、11週間で方向が一致し、一致率は52.4%となりました。先ほど紹介した8週間の実際の予想結果では、いずれも8割を超える的中率でしたが、今回の長期間の参考シナリオでは5割台にとどまりました。ただし、今回の参考シナリオは当時のChatGPTの予想を再現したものではないため、この結果をそのままAIの予測精度と評価することはできません。

AI株価予想の賢い活用法:「当たる・外れる」を超えた分析ツールとして

今回の分析で注目したいのは、AIによる株価予想を単に当たるか外れるかという点だけで評価するのではなく、複数の回答から得られる情報をどのように活用するかという点です。予想終値の平均値から週末の株価水準を考えるとともに、回答の「ゆらぎ」を利用して市場センチメントを捉えることで、AIの予想をさまざまな角度から読み解くことができます。

また、予想した時点での見通しと、その後の実際の株価の動きを比較することも大切です。予想が外れた場合でも、その間にどのようなニュースや市場環境の変化があったのかを振り返れば、相場への理解を深めるきっかけになるでしょう。

皆さんも、今回紹介した方法を参考に、ChatGPTを使って日経平均株価の予想に挑戦してみてはいかがでしょうか。毎週の予想結果を記録し、実際の株価と比較しながら、AIの回答の「ゆらぎ」も含めて分析してみることで、AIを投資判断の参考として上手に活用するヒントが見つかるかもしれません。

参考:ChatGPTに日経平均株価を予想してもらう際の質問文(例)

あなたは株式市場の専門家であるストラテジストです。直前の金曜日(〇月〇日)の日経平均株価の終値は、〇〇〇〇〇円でした。直近の日本株や米国株の動向、為替相場、金利、金融政策、経済指標、企業業績、今後予定されている重要なイベントなど、株価に影響する情報を幅広く調べてください。

そのうえで、今週末の金曜日(〇月〇日)の日経平均株価について、次の2点を予想してください。

① 直前の金曜日の終値からの予想騰落幅(何円上昇、または下落するか)

② 今週末の金曜日の日経平均株価の予想終値

予想にあたっては、上昇要因と下落要因の両方を考慮し、現時点で最も可能性が高いと考える予想を1つ示してください。また、その予想に至った理由も簡潔に説明してください。