対米ドルで円だけ買い越しという異例

ヘッジファンド(以下ヘッジF)の取引を反映しているCFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円ポジションは、10月6日時点で買い越し(米ドル売り越し)が6.2万枚となり、1週間前に比べて小幅ながら拡大した(図表1参照)。このように対米ドルでの円買い越し拡大は、主要通貨の中では異例と言える。

【図表1】CFTC統計の投機筋の円ポジション(2025年1月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

主要5通貨(円、ユーロ、英ポンド、加ドル、豪ドル)のポジションから試算した米ドルのポジションは、10月6日時点で買い越しが32.3万枚と、ほぼ1ヶ月ぶりに30万枚以上に拡大した。これは円以外の4通貨が米ドルに対してすべて売り越しで、その売り越しの大幅な拡大が続いたため(図表2参照)で、対米ドルでの円買いの動きはやはり異例ということになるだろう。

【図表2】CFTC統計の投機筋の米ドル・ポジション(2026年1月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

世界的長期金利上昇の影響か=主要通貨は9月以降売り越しが加速

円以外の4通貨、ユーロ、英ポンド、加ドル、豪ドルは、10月6日時点ですべて対米ドルでの売り越しが9万枚以上とかなり大幅なものとなっている。中でも、英ポンドと豪ドルの売り越しは過去最高に迫るほどの大幅なものだ(図表3、4参照)。

【図表3】CFTC統計の投機筋の英ポンド・ポジション(2000年~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成
【図表4】CFTC統計の投機筋の豪ドル・ポジション(2000年~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

このような対米ドルでの主要通貨の売り越し拡大は、特に9月以降加速した。その意味では、世界的な長期金利上昇が米ドル買い要因になった可能性を感じさせる。ではなぜ、米ドルに対して円の買いが続いたのか。

日米当局の円安是正と連携の可能性=ヘッジF

円は他の主要通貨と異なり、9月に入ってからそれまでの売り越しから買い越しに転換した。そしてその後は一時152円まで米ドル安・円高が進んだ局面で、円の買い越しが急拡大していた。

この頃は、ベッセント米財務長官が日本政府に利上げやリフレ政策の転換など「円高になるための政策」への期待を繰り返し表明していた時期でもあった。そうした中で、ベッセント長官に近いとみられているヘッジFが、主要通貨の中では異例といえる円買いに動いていた。これは両者の連携の可能性を感じさせる。

円安から円高への反転を目指すベッセント長官など日米の通貨当局が、ベッセント長官に近いとされ、投機筋の代表格でもあるヘッジFと円買いで連携しているとしたら、日米当局とヘッジFは、円買いで利益が出ること、そして損失を拡大させないことも意識しながら、円安の阻止・是正に向けて動くことになるのではないか。

ヘッジFの損益分岐点は米ドル/円の120日MA(移動平均線)が目安とみられているが、それは足下159円台で推移している。その意味では、日米当局は159円を大きく超える米ドル高・円安回避に動く可能性があり、一方のヘッジFは日米金利差(米ドル優位・円劣位)縮小など米ドル安・円高が広がりやすい局面では円買いを拡大することで、米ドル安・円高の主導権を握ることを目指す可能性もあるのではないか(図表5参照)。

【図表5】米ドル/円と120日MA(2022年~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成