生成AIの進化で激変するデータセンター環境

2022年11月に生成AIの「ChatGPT」が登場して以来、大量の計算を短時間で行う必要性が一気に高まり、データセンターの高性能化が求められるようになった。「学習」からより進化した「推論」に進む中で演算量がさらに増加している。電力消費量も爆発的に伸びている。こうした中で、電気信号と光信号を相互に変換するデバイスである「光トランシーバー」が注目されている。

光トランシーバーは高速通信ネットワークを支える重要な役割を果たしている。データセンターや通信システムにおいて広く使われており、大量のデータを高速かつ効率的に伝送することを可能にする。電気信号を光信号に変換して光ファイバーで送信し、受信側で再び電気信号に変換する役割を持ち、送信側・受信側の両方で使うことができる。

通信速度は8倍へ、AI普及で求められる「高速化」

AI(人工知能)を使ったデータセンターが普及すると、光トランシーバーに求められる性能も高くなる。

AI技術の進展とデータ通信量の増大を背景に、データセンターで採用される光トランシーバーは、従来は100Gbps(ギガビット・パー・セカンド)程度だった。Gbpsは「1秒あたり何ギガビットを送れるか」を表す通信速度の単位である。2024年ごろを境に8倍の800Gbpsへの移行が進んでおり、将来的にはさらにその2倍の1.6Tbps(テラビット・パー・セカンド)、3.2Tbpsへと、より一層の高容量化・高速化が要求されると予想されている。AI向けの大規模処理では、データセンター内部のつなぎ方が重要になる。光トランシーバーは高速通信ネットワークを支える重要な役割を果たす。

2030年に10兆円規模へ。次世代技術「CPO」との関係は?

富士キメラ総研は、2030年の光トランシーバーの市場規模は10兆7328億円(2024年比3.6倍)になると試算している。2026年以降、冗長性(余裕部分)確保のためネットワーク構成が増強されるほか、電力消費の観点から分散運用による需要増加が見込まれるとしており、400Gbpsから800GbpsへとAIネットワーク向けのシフトが進む。また、1.6Tbpsや3.2Tbpsは次世代AIネットワーク向けで採用増加が予想されるとしている。

一方CPO(光電融合)は、2029年ごろから需要が急増する400Gbpsスイッチ(高性能通信向け)での採用が増えると試算されている。また、AIアクセラレータ(処理速度を上げる装置)チップ同士の接続におけるCPOの利用が増えるとみている。市場規模は2030年に14兆1850億円としている。

CPOは従来銅線で通信していた部分をすべて光で行うため、通信速度が大幅に向上する。光トランシーバーはCPOが普及するまでの過渡期の技術とみられがちだが、実際にはCPOと光トランシーバーは併存するとの見方も浮上している。

業績拡大の恩恵を受ける「光トランシーバー」関連5銘柄

フェローテック(6890)

半導体ウェハ・半導体設備向け部品を製造。真空シールでは世界シェアトップ。冷熱素材「サーモモジュール」がAIサーバー内の光トランシーバーの冷却用に需要が増加している。また、電解めっき法を用いてセラミック基板上に高精度な銅回路パターンを形成したDPC基板が、耐熱性が高いことから光トランシーバー向けに適しているとしている。

【図表1】フェローテック(6890):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2026年9月3日時点)

デクセリアルズ(4980)

光学弾性樹脂などニッチな電子部品・材料に強みがある。光信号を電気信号に置き換えるPD(フォトダイオード)を手掛ける。次世代材料であるインジウム系のPDを開発・製造。現在主流のGe(ゲルマニウム)に比べ高速変換を実現できるという。光源と組み合わせることで様々なセンシングに用いられる。会社側の資料によると、同社のPDは次世代高速光トランシーバーに求められる性能を実現し、データセンターの技術革新を後押しするとしている。一方、CPO向けの化合物系高速PDや光源の検出に使うモニターPDも手掛けている。

【図表2】デクセリアルズ(4980):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2026年9月3日時点)

アンリツ(6754)

通信計測器の世界大手。5G関連の計測では米キーサイトテクノロジーと双璧。2027年3月期の第1四半期決算では営業利益が前年同期比3.2倍の42億7800万円と快走。通信計測器事業がAIの普及拡大を背景としたデータセンター向け光トランシーバー計測器がけん引した。第1四半期の通信計測事業の受注高は336億円(前年同期比2.4倍)と四半期ベースで過去最高。1.6Tbps光トランシーバー用計測器の投入報道も。

【図表3】アンリツ(6754):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2026年9月3日時点)

santec Holdings(6777)

光通信、産業用など各種測定機に強みがある。2027年3月期第1四半期の営業利益は前年同期比49%増の31億400万円と好調。光部品関連事業で生成AIの普及によるトラフィックの増大を背景に、光通信用部品販売が堅調。特に光トランシーバーに用いられる光モニターの販売が北米向けを中心に伸びたとしている。

【図表4】santec Holdings(6777):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2026年9月3日時点)

オプトラン(6235)

光学薄膜装置の製造・販売を手掛ける。最先端技術に強み。AIデータセンターではデータの送受信に際し、電気信号と光信号を変換するための光トランシーバー向けに光信号多層膜フィルターが必要だが、同社はこのフィルター向け成膜装置におけるシェアが高いとされる。第2四半期の決算発表資料によると、2026年12月期通期の光事業領域の受注高は、米国ハイパースケーラー(大規模クラウド業者)の投資意欲の増大による光トランシーバー関連企業からの引き合いが旺盛なことから、期初計画では前年比4割増の50億円程度と想定していたが、4倍にあたる200億円に上方修正した。光学薄膜成膜装置が急伸しているもようだ。

【図表5】オプトラン(6235):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2026年9月3日時点)