160円を超える円安は国内的に許容されない=円安阻止の基本方針

当局は、ゴールデンウィーク中に約11兆円の円買い介入に動いたが、6月以降、この介入を行った水準を大きく超えて米ドル高・円安が広がる中でも、ここまでは介入再開を見送っているとみられる。では、それは円安阻止介入方針の変更かといえば、そうではないのではないか。

あの介入がなければ、米ドル高・円安は、日米金利差(米ドル優位・円劣位)拡大や日本の長期金利上昇の影響で165円前後まで広がっていた可能性もあった(図表1、2参照)。そうした中で、ここまで米ドル高・円安をかろうじて162円台にとどめたことにより、ゴールデンウィークの介入には一定の効果があったと当局は考えている。

【図表1】米ドル/円と日米金利差(2026年1月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成
【図表2】米ドル/円と日本の長期金利(2025年1月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

当局が、ゴールデンウィークに米ドル高・円安が160円を超えた局面で、2024年7月以来の円買い介入に動いたのは、もはや160円を大きく超える円安は、本来、収益面ではプラスとなる輸出企業も含めて、国内的には許容できないものになったとの判断があり、それは短期間で変わるものではないだろう。ではなぜ、足下で160円を大きく超える米ドル高・円安が続く中で円買い介入の再開を見送っているのか。

「骨太の方針」と介入再開見送りの2つの理由

約1年前から、円安は日本の財政規律への懸念を受けた長期金利上昇が主因との見方が強くなった。財政規律への懸念は、目先的には高市政権の経済財政運営と改革の基本方針である「骨太の方針」が最大の焦点になり、特に6月末にその原案が公表された頃から長期金利上昇に拍車がかかった。こうした「骨太ショック」の長期金利上昇懸念が続く中では、円買いの為替介入の効果は限られるというのが、介入再開を見送っている理由の1つと考えられる。

また、長期金利上昇や円安は、結果として「骨太の方針」修正への圧力にもなっている。実際に先週(7月6日週)、政府は「骨太の方針」の中で、日銀の利上げに反対していると受け止められた一部の表現の修正に動き出したようだ。その意味では、長期金利上昇や円安をある程度、意図的に放置することでどこまで「骨太の方針」が修正され、財政規律への懸念の払しょくになるかを見守っている可能性もあるのではないか。介入再開見送りのもう1つの理由ということだ。

160円を大きく超える円安は国内的に許容できないとの基本方針に変わりないなら、「骨太の方針」も、最近の円安の主因とされる財政規律への懸念の払しょくにつながるよう、できるだけ活用した上で円買い介入再開との相乗効果を狙うというのは、当局が描く1つのシナリオになっている可能性があるのではないか。

「骨太の方針」決定に合わせて介入再開も=投機筋の動向も意識

当局は、根強い円安マインドの払しょくのためには、円安を止めるにとどまらず、たとえば一気に150円程度まで米ドル/円の水準を変える必要があると考えている。そこで1つ鍵になりそうなのが投機筋の動向だ。

足下の米ドル高・円安には、投機筋の円売りの影響が大きくなっているが、投機筋は夏季休暇入りのタイミングで円売りポジションをいったん大きく縮小させる傾向がある(図表3参照)。つまり、円の買い戻しが増える可能性がある。2年前の2024年7月に円安から円高への急反転が起こったのは、まさにこの投機筋の円買いへの急転換の影響が大きかった可能性がある。

【図表3】米ドル/円とCFTC統計の投機筋の円ポジション(2026年1月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

政府は「骨太の方針」について、7月中の閣議決定を目指している。このためこの「骨太の方針」決定のタイミングに合わせて円買い介入が再開される可能性は注目される。そしてそれが投機筋の円売りポジションの転換とどれだけ連動するかが、円安の阻止・是正の行方を決める可能性がある。