今回は、「離れて暮らす親の見守りと認知症介護」について、これまで本コラムでご紹介してきたことにも触れながら、改めて3つのポイントを挙げてお話します。
1.離れて暮らす親が認知症になっても介護施設一択ではない
親と子が離れて暮らしていると、普段の親の生活の様子が分からなかったり、緊急時に親の元へ駆けつけられなかったり、仕事や子育てが忙しくて実家へ帰れなかったり、といった不安を抱えがちです。
親が認知症になるとさらに不安は大きくなるので、介護施設に預けることを検討する場合も多いかと思いますが、親を子の家に呼び寄せたり、子が親の家にUターンしたりするなどの方法もあります。
ただ、親を子の家に呼び寄せる場合、子の家族が親との同居を望んでいるのか、親との同居で生活環境が変わっても受け入れられるのかといった、事前の話し合いが必要になります。親との同居を希望しない場合は、子の家の近くに住んでもらう近居という方法もあります。
また、子がUターンする場合は、仕事を辞めたり、家族の役割が大きく変わったりします。呼び寄せやUターンは、親や子の家族の意思を考慮する必要があるので、簡単に決められるものではありません。
そこで、私が提案したいのは、遠距離介護です。介護の体制を整えたり、見守りサービスやツールを使ったりするなどの工夫をすれば、認知症の親と離れて暮らしていても、通いで介護ができ、親は住み慣れた家で生活を続けられます。
私が遠距離介護を勧める1番の理由は、親も子も今の生活を維持できるからです。例えば、私の母は81年間岩手以外の場所で生活したことがありません。母は私が暮らす東京での生活を望んでいませんでしたし、私も岩手にUターンしなくなかったので、お互いの意思を尊重した結果、自然と遠距離介護になりました。
もし母を無理やり東京に呼び寄せていたら、家から出なくなったり、ひきこもったりして、認知症の進行が加速していたかもしれません。急な生活環境の変化によって、心身に不調をきたす状態をリロケーションダメージと言いますが、遠距離介護のおかげで回避できました。
また、遠距離介護は親が住み慣れた環境で生活できるので、認知症が進行しても自立した生活を続けやすくなります。介護費用については、交通費や介護施設の種類にもよりますが、遠距離介護のほうが介護施設に預けるよりも安く抑えられる場合が多いと思われます。
2.離れて暮らす親を見守る民間サービスや介護保険サービス
遠距離介護の場合、離れて暮らす親をどうやって見守ればいいのでしょう。例えばご近所や町内会、きょうだいや自分自身など、人に頼って親を見守る方法があります。あるいは警備会社や郵便局などが提供している、民間の見守りサービスを活用する方法もあります。
他にも公的な介護保険制度が適用されるサービスを利用すれば、ケアマネジャーやヘルパー、デイサービスなどいわゆる介護のプロたちが、親の生活をサポートしてくれるようになるので、自然と親の見守りにもなります。
公的な介護保険制度を利用するためには、まず親が住んでいる地域を担当している地域包括支援センターを調べて、相談するところから始めてみてください。わが家はこうした介護保険サービスを活用しているおかげで、11年以上も遠距離介護を続けられています。
3.見守りカメラや人感センサーも活用
離れて暮らす親を、見守りカメラなどのツールを使って見守る方法もあります。親の家にインターネット環境を整える必要がありますが、子の好きなタイミングで親の様子を確認できるようになります。
例えば、深夜や早朝、台風などの自然災害で外出が難しいときに、ご近所さんに親の様子を見に行って欲しいとは言いづらいものです。見守りカメラがつながっていれば、こうした気づかいはいらなくなります。
また、見守りサービスのスタッフなど第三者の目では、ちょっとした親の変化に気づけない場合があります。見守りカメラであれば、子が自らの目で確認できるので、親の変化に気づきやすくなります。わが家では、母の認知症の進行とともに見守りを強化していき、見守りカメラの台数を増やしていきました。
親が見守りカメラを嫌がる場合には、人感センサーを設置すると良いでしょう。人感センサーでは親の表情や様子は分かりませんが、生存確認はできます。
遠距離介護を続けるためには、他にも様々なノウハウがありますので、本コラムの過去の記事などもぜひ参考にしてみてください。