「行き過ぎた円安」の反動が一段と広がる可能性
メキシコペソ/円は、5月高値の9.4円から7円まで、この間の最大下落率は25%にも達した。7月以降の約2ヶ月でも、最大下落率は22%以上となる。2割以上の下落を米ドル/円に当てはめてみると、161円から一気に130円割れになる計算なので「暴落」と言ってよいだろう(図表1参照)。
このメキシコペソ/円の暴落は、異常なほどの「上がり過ぎ」となっていたことの反動が大きかったと考えられる。メキシコペソ/円の5年MA(移動平均線)かい離率は、一時は45%まで拡大した。これは空前の「上がり過ぎ」と言えるものだった。同かい離率は、この間の暴落により10%近くまで縮小した(図表2参照)。まさに異常な「上がり過ぎ」が修正される中での暴落だった。
メキシコペソ/円の5年MAかい離率が10%程度まで縮小したと言っても、かつての実績からするとまだ「上がり過ぎ」修正の途上に過ぎず、このままさらに足下で6.5円程度の5年MAを下回る動きに向かう可能性がある。その意味では、なお続落リスクには要注意ではないか。
多くのクロス円が「上がり過ぎ」ていた
このメキシコペソ/円ほどではないものの、最近にかけて記録的な「上がり過ぎ」になっていたことは、多くのクロス円に共通したことだった。豪ドル/円の5年MAかい離率は25%まで拡大し、2007年に記録した過去最高に迫る動きとなった(図表3参照)。英ポンド/円の5年MAかい離率は一時30%近くまで拡大した(図表4参照)。
このようにクロス円が軒並み記録的な「上がり過ぎ」となった背景には、「行き過ぎた円安」があっただろう。外貨の「上がり過ぎ」というより、本質的には低金利を最大の理由とした円売りが「行き過ぎ」となった結果と考えられる。その代表格が最初に取り上げたメキシコペソ/円であるなら、メキシコペソ/円の異常な「上がり過ぎ」修正に伴う大幅下落の動きは、今後他のクロス円にも基本的には波及していく可能性がありそうだ。
米ドル/円は、先週にかけて52週MAを4週連続で下回った。このような長く52週MAを割れる動きはすでにトレンドが円安から円高に転換した可能性を示している(図表5参照)。そうであるなら、クロス円でも円安から円高へのトレンド転換により、これまでの外貨の「上がり過ぎ」修正が本格化に向かう可能性が高いのではないか。