年始に起きた能登半島地震を受けて、高齢の親は自力で避難できるのか、体が不自由な状態で避難所生活は送れるのかなど、不安に感じた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

私の母は認知症であり、手足も不自由なため自力で避難できません。今回は大規模な自然災害が起きた時のために、わが家で行っている準備についてご紹介します。

ハザードマップで親の家の自然災害リスクを把握

まずは、母が住む岩手県盛岡市の地震災害、水害、土砂災害、火山災害のハザードマップを確認し、家の周辺地域で想定される自然災害のリスクと指定緊急避難場所を把握するところから始めました。

実家で最も高い災害リスクは、地震災害です。昭和42年に建てられた旧耐震基準の実家は、2011年の東日本大震災では大きな被害は免れましたが、今後も大丈夫かどうかは分かりません。耐震補強工事をすべきですが、重度まで認知症が進行している母は、今後、介護施設に入る可能性もあります。正直なところ耐震補強にお金をかけるよりも、介護施設の費用に充てるほうが現実的だと考えています。

もう1つの災害リスクは、土砂災害です。実家はハザードマップ上では土砂災害警戒区域になっていないのですが、山の近くにあるので、大雨や地震による土砂崩れが心配です。

このように、まずは親の家がある地域のハザードマップを見て、どのような自然災害のリスクがあるかを把握しておきましょう。

災害時要援護者名簿への登録

私の母のように、体が不自由で避難が困難だったり、認知症で自然災害の状況が理解できなかったりする場合は、自治体の災害時要援護者の名簿に登録しましょう。

登録条件は自治体ごとに違っていて、岩手県盛岡市は下記の条件に該当する人が登録できます。

・75歳以上の方のみで構成される世帯の方
・要介護3以上の在宅生活者
・身体障がいのある方
・知的障がいのある方
・その他援助を必要とする方

母は最初の3つの条件に該当しているため、名簿の登録ができました。

市役所で申請を行った際、個人情報の取扱いに関する同意を求められました。名簿を作成するために、氏名、住所、電話番号、性別、生年月日、避難が必要な理由などの個人情報を提供するのですが、この情報は地元の警察署や消防署、町内会や民生委員などにも共有されるので、同意が必要なようです。

自然災害が発生した直後は、行政よりも地域住民による支援のほうが効果があると言われています。1995年に起きた阪神・淡路大震災では、がれきの下から救出された人の95%は地域住民の力によって救出されたそうです。

地域支援者を名簿に登録し、避難支援の確率を上げる

災害時要援護者名簿の効力を高めるために、地域支援者の名前を書くと良いようです。地域支援者とは、避難支援をしてくれる可能性のある近隣住民や自治会などです。

ただし、地域支援者を名簿に登録していても、避難が確実というわけではありません。なぜなら地域支援者の避難支援は、義務ではないからです。避難を支援してもらえる確率は上がりますが、保障されるものではありません。

盛岡市の場合、名簿登録者は緊急連絡先や保険証の写し、服薬中のお薬情報、かかりつけ医の連絡先などをまとめた「あんしん連絡パック」を作成します。地域支援者と一緒に避難する際、あんしん連絡パックの場所がすぐ分かるよう、保管場所を冷蔵庫の横などに明記します。災害発生時に持ち出して避難することで、避難所で適切なサポートが受けられる仕組みになっています。

見守りカメラで離れて住む親の安否を確認

2022年3月16日、福島県沖を震源とする最大震度6強の地震がありました。東北新幹線が不通になるほどの大きな地震で、そのとき私は東京に居ました。

岩手の母の安否確認のために活用したのが、見守りカメラです。もともと介護のために設置していたのですが、映像で実家の状況を確認したところ、居間の置き物が倒れている程度で、母は寝室で寝ていて無事でした。

地震は23時台に起きたのですが、ご近所に連絡して母の様子を見に行ってほしいとは言いづらい時間帯だったので、24時間いつでも親の様子を確認できる見守りカメラは、本当に役に立ちました。

台風による暴風雨で一歩も外に出られない状況のときも、見守りカメラを使って母の安否確認を行いました。今のところ、インターネットがつながらなくなるほどの大きな自然災害は起きていないので、すべて見守りカメラで対処できています。

今後インターネットがつながらないような自然災害があった場合は、災害時要援護者名簿に登録してあるので、地域による避難支援があることを期待しています。

ハザードマップによる自然災害リスクの把握に加え、災害時要援護者名簿の登録、見守りカメラの設置など、自然災害を自分事として捉え、準備をしておきましょう。