継続的な動き(トレンド)と一時的な動き

米ドル/円は、足元で146.5円程度の120日MA(移動平均線)を大きく下回った(図表1参照)。このように120日MAを大きく下回る動きは一時的ではなく、継続的な動き、つまり米ドル/円の上昇トレンドはすでに終了し、下落トレンド(米ドル安・円高)へ転換した可能性が高いことを示している。

【図表1】米ドル/円と120日MA(2010年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

そうであれば、トレンドと逆行する米ドル/円の上昇は限られる可能性が高い。経験的には、下落トレンドが展開する中での一時的な米ドル/円の上昇は、120日MAを大きく、長く越えられない可能性が高い。

ただし、120日MAからの示唆にはこれまで「ダマシ」もあった。2023年1月にかけて米ドル/円が127円まで下落した局面も、120日MAを大きく割れるものだったが、結果的にここでの米ドル/円下落は、2022年10月から2023年1月までの3ヶ月で終了した。トレンド(継続的な動き)とは、普通は1~2年以上続くもので、その意味ではたった3ヶ月で終了した米ドル/円の下落について、下落トレンドへの転換という120日MAの示唆は間違い、「ダマシ」だった。

この局面において、米ドル/円は52週MAを大きく割れることはなかった(図表2参照)。つまり、この局面において52週MAは120日MAと異なり下落トレンドへの転換を示唆せず、結果的にこちらが正しかったと言えるだろう。

【図表2】米ドル/円と52週MA(2000年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

トレンドの転換を見極めるには52週MAを注視

このように、120日MAより52週MAの方がトレンド転換の示唆では、より「ダマシ」が少ない。そんな米ドル/円の52週MAは、足元で140円程度。その意味では、米ドル/円が140円を本格的に割れてくるようなら、すでに下落トレンドへ転換している可能性が一段と高まることになるだろう。念のために言えば、140円を大きく割れるまでは、まだ米ドル/円の下落は一時的に過ぎない可能性も残っていることにはなる。

仮に、米ドル/円が140円を本格的に割り込み、下落トレンドへ転換している可能性が一段と高まるようなら、経験的にはそれと逆行する一時的な米ドル/円の上昇は52週MAを大きく、長く上回らない程度にとどまる可能性が高い。この場合の「大きく」とは、最大で5%程度なので、「140×1.05=147円」という計算から、すでに米ドル安・円高へトレンド転換しているなら、それと逆行する一時的な米ドル高・円安への戻りは最大でも147円までがせいぜいといった見通しになりそうだ。

過去の米ドル/円の下落トレンドは、基本的には2年以上続き、2割以上の米ドル下落となるのが基本だった。以上を整理すると、米ドル/円が52週MAの位置する140円を本格的に割り込み、下落トレンドへ転換している可能性が高まるようなら、米ドル/円は戻っても147円までがせいぜいで120円を目指すというシナリオが基本になるだろう。