円高の行方を決める最大の鍵、米国金融政策

1990年以降のFRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策の転換は11回あった。このうち利上げから利下げへの転換は5回、そして利下げから利上げへの転換は6回だった(図表1参照)。

【図表1】FFレートの推移(1990年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

この中で、2008年「リーマン・ショック」、そして2020年「コロナ・ショック」といった2つの歴史的なショック局面で行われた金融緩和の転換は、他のケースに比べて異例の長い期間を要した。このため、この2つのケースを除いた9つのケースについて、最後の政策変更から最初の政策変更までどれだけの時間がかかったのか調べてみた。

このうち「最後の利上げ」から「最初の利下げ」への転換となったケースは5回で、最短が5ヶ月、最長が18ヶ月、平均10.8ヶ月だった。これに対して、「最後の利下げ」から「最初の利上げ」への転換となったケースは4回で、最短が7ヶ月、最長が17ヶ月、平均12.5ヶ月だった(図表2参照)。以上のように平均で比べた場合、利上げから利下げへの転換が、利下げから利上げへ転換するより早い結果となっていた。

【図表2】米金融政策変更の間隔(1990年~)*黄色は利上げ、青色は最後の利上げから最初の利下げの間隔
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

今回は利上げから利下げへの転換が注目される。これまでのところの「最後の利上げ」は7月。最短の5ヶ月後に「最初の利下げ」となるなら、この12月に利下げが行われる計算だ。さすがにそれは非現実的だろうが、これまでの平均である10.8ヶ月後となるなら「最初の利下げ」は2024年6月頃といった計算になる。仮に、これまでの最長で「最初の利下げ」が18ヶ月後としても、2025年1月という計算だ。

以上のように見ると、仮に2023年7月が今回の「最後の利上げ」だったなら、過去の平均的ペースでも2024年半ばには「最初の利下げ」が行われる見通しとなり、過去の最長ペース以上に時間がかからない限り、2024年中に「最初の利下げ」が行われるという見通しになる。

米ドル高・円安から米ドル安・円高へ転換し、それがどんなペースで展開するかを考える上で最大の鍵を握るのはFRBの「最初の利下げ」がいつになるかということだろう。これまで見てきたことからすると、それは2024年後半に注目度が高まるのではないか。そんな「最初の米利下げ」を巡る思惑が、米ドル安・円高の行方に大きく影響することになりそうだ。