介入開始から円安、円高の終了までのコスト

米ドル/円は、足元で過去5年の平均値である5年MA(移動平均線)を2割以上と大きく上回ってきた。こんなふうに5年MAを2割以上で上回ったのは、1990年以降では過去に3回あった。また逆に、5年MAを2割以上下回ったことは2回あった(図表1参照)。

【図表1】米ドル/円の5年MAかい離率と為替介入の関係(1990年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

以上の5回のうち2015年を除く4回は円安、円高阻止の為替介入が行われ、そのような為替介入は最終的には円安、円高が終了するきっかけになった。ただし、介入を始めて、すぐに円安、円高が止まったわけではなく、かつては相場の流れが変わるまでに1年以上とかなり長い時間を要することが少なくなかった。

なお、2022年の場合は、最初の円安阻止介入出動が9月22日。そして米ドル高・円安は10月21日の151円で終了となったので、介入を始めて丁度1ヶ月で円安は終了した結果となったが、これは介入局面の中でも最も早く成功した例だった。

例えば1993年4月に円高阻止介入を始めたケースでは、円高の終了は1995年4月の80円だったので、2年も円高阻止介入を続けてようやく円高が終了した。円安阻止の場合も、1997年11月から介入を始めたものの、円安終了は1998年8月の147円だったのでやはり1年近くも円安終了に時間を要した結果となった(図表2参照)。

【図表2】米ドル/円の推移(1990年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

このケースにおける最後の円安阻止介入は1998年6月に日米協調介入の形で行われたものだった。円安阻止「最後の切り札」として米国との協調介入が実現したものの、それでも円安は終わらず為替介入も見送られていた中で、皮肉にも8月に147円で円安は終了となった。きっかけは、9月から米国が利下げに転換したことから米ドル安の動きが強まったことだろう。あくまで結果として、米ドル高・円安も8月の147円で終わったということと考えられる。

時間も値幅も短縮化=介入戦略の効率化

2010年9月から始めた円高阻止介入だが、結果的に円高は2011年10月の75円で終了した。やはり、円高阻止に成功するまで1年もの時間を要する形となった。ただ、この局面での円高阻止介入を始めた米ドル/円の水準は82円程度で、それが75円で円高終了となったことで言えば、せいぜい6~7円程度で米ドル安・円高進行に歯止めをかけられたと見ることもできる。

2022年の場合は9月に145円で円安阻止介入を始め、結果的に151円で円安終了となったので、やはり6円前後で米ドル高・円安進行に歯止めをかけることができたと言えそうだ。

以上のように見ると、介入を始めてすぐに円安や円高が終了したわけではなかったものの、かつてに比べると終了までに要する時間や値幅はかなり短縮化されてきたようだ。これは、介入戦略の効率化などの影響と考えられるので、次回その辺りについて述べたい。

つまりは、今回の場合も円安阻止介入が始まったら、米ドル高・円安の終了、基調転換にはそれほど長い時間はかからない可能性が高いのではないだろうか。(続く)