米ドル4%強、メキシコペソ10%弱=先週からの最大下落率
SVB(シリコンバレー銀行)経営破綻をきっかけに、金融システム・リスクへの懸念からリスクオフが急拡大した。こうした中で米ドル/円は138円手前から132円台前半まで最大で4%以上の下落となった。そんな米ドルの下落率を大きく上回り、最大で10%近くもの大幅下落となったのがメキシコペソ/円だった(図表1参照)。
メキシコペソ/円の下落が大きくなったのは、それ以前に大きく上昇したことの反動が入ったためだろう。2月以降米ドル/円も大きく上昇、2022年10月に記録したこの間の米ドル高値まで1割程度まで接近したが、メキシコペソ/円は同じく2022年10月に記録したこの間のメキシコペソ高値を更新するまで上昇した。
こうした中で、メキシコペソ/円の90日MA(移動平均線)かい離率は3月8日にはプラス8%程度まで拡大した(図表2参照)。これは、短期的なメキシコペソ「上がり過ぎ」の懸念が強まっていたことを示すものだった。
米ドル/円の90日MAかい離率は、先週にかけて小幅にプラスを回復した程度にとどまっていた(図表3参照)。このように、90日MAとの関係で見ると短期的な「上がり過ぎ」の懸念が出始めていたメキシコペソ/円に対して、米ドル/円はほぼニュートラルな状況にあった。この違いが、いわゆる「SVBショック」のリスクオフ局面で、メキシコペソの下落を拡大させた一因と考えられる。
そんなメキシコペソ/円も一時7円割れとなったところで、90日MAかい離率は小幅にマイナスとなった。これは、短期的なメキシコペソの「上がり過ぎ」が是正された可能性を示している。政策金利が10%を上回る高金利の魅力も高いメキシコペソだけに、下落リスクが一巡したと見ると改めて押し目買いが入る可能性はありそうだ。
ただメキシコペソ/円は、2020年3月の「コロナ・ショック」での急落の後から、約3年で約8割の大幅高となった。5年MAかい離率で見ると、空前の「上がり過ぎ」圏での推移が続いていると見られる(図表4参照)。こうした中で長期的なメキシコペソ「上がり過ぎ」の是正が本格化すると、基本的には足元で5.7円程度の5年MAを大きく下回るまで下落するリスクがありそうだ。