円高は続くのか、それとも「ダマシ」か

2021年のケースを考察

2021年は米ドル安・円高でのスタートとなり、1月6日には102.5円まで米ドルが下落、1米ドル=100円割れといった「超円高」再現も時間の問題といった様相だった。ところが、結果的には、この1月6日の102円台がその年の米ドル安値となり、その後は2022年にかけてまだ記憶に新しい150円を越える歴史的米ドル高・円安が展開するところとなった(図表1参照)。結果的には、この2021年の新年相場の米ドル安・円高は、その後のトレンドとは逆の「ダマシ」だったわけだ。

【図表1】米ドル/円の週足チャート(2021年1月~2022年1月)
出所:マネックストレーダーFX

「その後」を知る我々からすると、2021年は、「コロナ・ショック」後の景気回復が始まり、米国を中心に金融引き締めへの転換に向かった年であり、その意味では米ドル高トレンドが始まったのも当然のような気がする。ただ、2021年が始まったばかりの時点では、むしろ1米ドル=100円割れといった象徴的な米ドル安・円高への意識が強かったのかもしれない。

2017年のケースを考察

新年早々、結果としてその年の米ドル高安値を付けたもう1つの例は2017年だ。この年は米ドル高・円安でスタート。1月3日には118.5円まで米ドルが上昇したが、結果的にはそれがその年の米ドル高値となった(図表2参照)。

【図表2】米ドル/円の週足チャート(2016年10月~2017年12月)
出所:マネックストレーダーFX

なぜ、2017年の新年相場の米ドル高は「ダマシ」となったのか。それは、2016年末にかけてのある大相場の影響があったのではないか。2016年11月の米大統領選挙で共和党のトランプ候補が「サプライズ」の勝利となると、為替相場はほんの1ヶ月余りで100円割れ寸前から一転して120円近くまで米ドルが急騰。「トランプ・ラリー」と呼ばれた大相場が起こった。

2017年の新年相場が米ドル高で始まったのは、そんな「トランプ・ラリー」の続編を試す動きだったのではないか。ただ、記録的な米ドル急反騰の「トランプ・ラリー」は、実はほんの1ヶ月余りで終わっていた。

これまで新年のスタート・ダッシュが、結果的に「ダマシ」であり、新年早々にその年の米ドル高安値を記録した2例について見てきた。2021年は1月6日にその年の米ドル安値を記録した。そして2017年は1月3日にその年の米ドル高値を記録した。さて、2023年は1月5日までの段階で、1月3日の129.5円が米ドル安値だが、これは2023年の米ドル安値にならないだろうか。

2016年のケースを考察

最後にもう1つ、2016年のケースについて見てみよう。この年は、1月末に米ドル高値更新となったが、結果的にはそれがその年の米ドル高値となった(図表3参照)。当時は、2015年6月の125円で米ドル高・円安トレンドは終わっていた。ただ、マーケットでは、それまで何度か「黒田サプライズ」により円安誘導に動いた日銀の黒田総裁の動きへの警戒が強かった。こうした中で、日銀は2016年1月末にマイナス金利政策を決定。ところがそれに伴う円安反応が限定的であることが確認される中で、一転して円高へ向かうところとなったわけだ。

【図表3】米ドル/円の週足チャート(2016年1月~2017年1月)
出所:マネックストレーダーFX

3つのケースから考えうること

以上、新年相場が結果としてその年のトレンドとは逆、言わば「ダマシ」だった3つのケースについて見てきた。では、2023年の新年の米ドル安・円高のスタート・ダッシュはまだ続きがあるのか、それとも「ダマシ」なのか。少なくとも新年相場には、理由は様々だが、「ダマシ」もありうるということは、過去の例から指摘できそうだ。