90日MAかい離率とポジション

年末年始から米ドル安・円高をトライする展開が続いた。ただ、こうした中で徐々に短期的な米ドル「下がり過ぎ」懸念も拡大してきたようだ。米ドル/円の90日MA(移動平均線)は足元で141.4円程度なので、米ドル/円が目先的に130円を割れると、90日MAかい離率はマイナス8%以上に拡大する計算になる。米ドル/円の90日MAかい離率は、経験的にはマイナス10%前後に拡大すると、短期的な「下がり過ぎ」懸念が強まる。

同かい離率が日足終値ベースでマイナス8%以上に拡大すると、2008年の「リーマン・ショック」後の米ドル急落局面以来になる(図表1参照)。その意味では、目先的に米ドルが130円を大きく割り込むようなら、短期的な「下がり過ぎ」懸念がかなり高まると言えそうだ。

【図表1】米ドル/円の90日MAかい離率(1995年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

2022年10月にかけて展開した歴史的な米ドル高・円安から、11月以降急激な米ドル安・円高へ一変した。過去2ヶ月余りで、米ドル/円は151円から130円割れへ、最大で20円以上もの急落となった。こうした中で、上述のように短期的な米ドル「下がり過ぎ」懸念が強まってきたということだろう。

2022年11月から米ドルが急落に転じた一因には、それまで歴史的米ドル高・円安が展開する中で、米ドルが「買われ過ぎ」となり、その反動が入ったことも大きかったと考えられた。

ヘッジファンドなどの取引を反映するCFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円ポジションは、2022年10月末には売り越し(米ドル買い越し)が10万枚以上に拡大。経験的には米ドル買い・円売りの「行き過ぎ」懸念が強くなっていた(図表2参照)。そんな「行き過ぎ」の反動が、その後一転して米ドル急落が拡大に向かう中で大きく影響した可能性はあっただろう。

【図表2】CFTC統計の投機筋の円ポジション(2021年1月~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

行き過ぎた米ドル買い・円売りの動きは、過去2ヶ月余りの米ドル急落の中で大きく是正された可能性がある。CFTC統計の投機筋の円ポジションは、先週にかけて売り越しが4万枚を割り込んだ。円の売り越しは、過去2ヶ月余りで半分以下に縮小し、少なくともこの統計で見る限り、米ドルの「買われ過ぎ」は是正されたようだ。

米ドルの「買われ過ぎ」は是正され、むしろその米ドルは短期的には「下がり過ぎ」懸念も拡大してきた。以上のことから、年末年始からの米ドル安・円高をトライする動きもまだまだ続くというよりは、一旦のクライマックスが近付いている可能性が高いのではないか。