乱高下が示した「行き過ぎたハト派期待」の反動

11月2日のFOMC(米連邦公開市場委員会)を受けて、米ドル/円は一旦145円台まで急落したものの、その後は148円程度まで一転して急反発となった。また米国株、NYダウなどは最初大きく上昇したものの、その後は一転して急落となった。

これらのプライスアクションは、今回のFOMCの結果が、期待したほどハト派ではなかったとマーケットが受け止めたことを示しているだろう。このようになった大きなきっかけは、10月21日のWSJ(ウォールストリート・ジャーナル)紙の報道(参照11月2日付、「FOMC『利上げ幅縮小』議論を考える」)だろう。これを受けて、マーケットでは、早期の利上げ幅縮小と、そして想定していたより利上げ停止が早まるといった「ハト派」期待が広がったのではないか。

この「ハト派」期待のうち前者、早期の利上げ幅縮小は基本的には正しかっただろう。パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長は、FOMC終了後の記者会見で、「どこかの時点で利上げペースを落とすことが適切になり、早ければ次回ないしその次の会合となる可能性はある」などと語った。

ただし、もう1つの「ハト派」期待、「想定していたより利上げ停止が早まる」といったことは大きく裏切られた可能性がある。パウエル議長は、「前回会合以降入手したデータは、金利の最終的な水準がこれまでの想定より高くなることを示唆」、「利上げ停止について考えるのはあまりに時期尚早」などと語ったためだ。

結果として、マーケットは10月21日のWSJ記事などをきっかけに「行き過ぎたハト派期待」に傾斜していたということではないか。だから、FOMC終了直後の初期反応は米金利低下、米ドル売り、米国株買いとなった。しかしその後、一転して米金利上昇、米ドル買戻し、米国株急落となったのは、ハト派期待が行き過ぎだったとして、その修正を余儀なくされたということではないか。

改めてマーケットが修正する今後のシナリオは、「パウエル発言」が基本になるだろう。「金利の最終的な水準がこれまでの想定より高くなる」との発言を参考にすると、9月FOMCで公表されたFOMCメンバーの見通し「ドット・チャート」における、政策金利FFレート(上限)の2023年末4.6%(予想中央値)の上方修正に注目が集まることになりそうだ。

既にFFレート上限は、11月FOMCで4%まで引き上げられ、さらに12月FOMCで利上げ幅をこれまでの0.75%から0.5%に縮小した場合でも4.5%まで一段と上昇することになる。その上で、年明け以降の利上げ幅も0.25~0.5%といった具合に、これまでよりは小幅になるとしても、「利上げ停止について考えるのはあまりに時期尚早」(パウエル議長)との発言通りになるなら、2023年に入りFFレートは5%を大きく上回る可能性も視野に入れる必要が出てくるだろう。

米ドル/円はこの間米金融政策を反映する米2年債利回りと高い相関関係が続いてきた(図表1参照)。その意味では、FFレートが2023年にかけて5%を大きく上回る可能性があるなら、米2年債利回りもこの間の高値を大きく更新し、5%突破を目指し一段と上昇する可能性が出てきた(図表2参照)。これを、これまでの米ドル/円との関係に当てはめると、155~160円まで一段と米ドル高・円安が広がる可能性があるといった見通しになる。

【図表1】米ドル/円と米2年債利回り (2022年3月~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成
【図表2】米2年債利回りとFFレート (2018年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成