為替相場が循環する理由

円安の動きを過去5年の平均値である5年MA(移動平均線)からのかい離率で見ると、米ドル/円も、円の総合力を示す実質実効レートで見ても、いずれも最近にかけて記録的な「行き過ぎた動き」となっている。

直近、米ドル/円の5年MAかい離率は、プラス30%以上に拡大したが、これは1980年以降では3回目のこと(図表1参照)。そして円の実質実効レートの5年MAかい離率は、マイナス20%以上に拡大したが、これは1995年以降で確認する限り、2015年前後に起こって以来のことになる(図表2参照)。このように、最近にかけての円安は記録的に行き過ぎた結果と言えそうだ。ではなぜそうなったのか。

【図表1】米ドル/円の5年MAかい離率(1980年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成
【図表2】円の実質実効レートの5年MAかい離率(1995年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

それを考える前に、なぜ米ドル/円は、図表1で顕著なように長期間において一定の範囲内を循環してきたのか。それは円安でも、円高でも、それが行き過ぎると次第に逆方向への反作用が強まったことが大きかったのではないか。

具体的には、今回のような円安の場合は、それが高じると日本の輸出が増加し、または日本への外国からの観光、いわゆるインバウンドが増えることに伴う円買いの増加が、円安から円高への転換をもたらす大きな要因になったと考えられる。

ただ、今回はコロナ禍によって、例えばエネルギー価格の急騰は、円安による輸出額の増加以上に、輸入額の拡大をもたらした可能性があった。もっと分かりやすいのは、コロナ禍による海外旅行の自粛であり、円安でインバウンドが増加する関係は大きく崩れるところとなった。

こうした「コロナ禍要因」は、米ドル/円の循環的変化にズレを生じさせる要因となった可能性がある。ただ、そのような「コロナ禍要因」も、最近にかけてエネルギー価格の高騰が徐々に落ち着き、また海外旅行の自粛見直しでインバウンドも急回復に向かう見通しになってきた。

「コロナ禍」といった特殊要因により、円安が進む中で円高への反作用が遅れがちになっていた分の修正、具体的には輸出の増加、インバウンド拡大などが表面化することで、米ドル/円がこれまでの循環的な変動から大きくズレることなく続く可能性に注目したいところだ。