米ドル「上がり過ぎ」反動を左右するのは?
米ドル高・円安が140円を超えそうな動きとなってきた。ちなみに、140円以上の米ドル高・円安となると、1998年以来のことになる(図表1参照)。この1998年の米ドル高・円安は結果的に147円まで続くところとなったが、果たして今回はどうか?
1998年に147円まで米ドル高・円安となったところで、5年MA(移動平均線)かい離率はプラス30%以上に拡大した(図表2参照)。同かい離率がプラス30%以上に拡大したのは、1980年以降で確認した限りでは、この1998年とそして2015年の2回しかなかった。ちなみに、足元の5年MAは111.7円程度なので、145円を超えると、5年MAかい離率は、1980年以降では3度目の30%以上に拡大する計算になる。
このように5年MAかい離率で見ると、1998年もそして今回も140円を超える米ドル高・円安はかなり「行き過ぎ」懸念が強い動きと言えそうだ。1998年の場合は、行き過ぎた米ドル高・円安が147円で終わると、その後は一転して米ドル安・円高へ急激に戻すところとなっただけに、今回の場合も米ドル高・円安が終わった後、米ドル安・円高へ戻す動きには一応の注意が必要だろう。
ただ、米ドルの「上がり過ぎ」懸念が強いほど、その後の反動で米ドル暴落リスクが高まったわけではない。5年MAかい離率で見ると、1998年以上に米ドル「上がり過ぎ」となったのは2015年だったが、この時は米ドル高・円安終了後も米ドル安・円高への戻りは比較的緩やかなものとなった。
数字で確認してみよう。1998年の場合は、米ドルがピークを付けてから、3ヶ月以内に米ドルは2割以上もの大幅な下落となったのに対し、2015年の場合は、米ドルがピークを付けてから、1割以上下落するまで8ヶ月以上もかかっていた。
この1998年と2015年の違いは、リスクオフ、「ショック相場」の有無だった。1998年の場合は、米ドルがピークを打ってから間もなく、ヘッジファンド危機などの「ショック相場」が起こったことで、「デレバレッジ」、いわゆるリスクを取ったポジションの解消が加速した。これを受けて米ドル「上がり過ぎ」の反動も勢い付いたと考えられた。一方、2015年の場合は、米ドルがピークを打った後も、しばらくは大きな「ショック相場」は起こらなかった。
以上を整理してみよう。1998年以来の140円を超える米ドル高・円安となっている最近の動きは、5年MAかい離率などで見ると、1998年と同様に米ドル高・円安の「行き過ぎ」懸念がかなり強くなっていると言えそうだ。1998年の場合は、米ドル高・円安が終了すると、リスクオフをきっかけに行き過ぎの反動から米ドルは大暴落となった。その意味では、今回も行き過ぎの反動で米ドル高から米ドル安へ急転換するかは、「××ショック」のようなことが起こるかに注意する必要があるだろう。