米ドル高・円安が加速する条件
米ドル/円は、年明け早々2021年来の米ドル高値更新となった。ではこれは、新たな米ドル一段高の始まりだろうか。結論的に言うと、116円半ばを大きく超えられるかが、テクニカルには重要な分岐点かもしれない。
米ドル/円の上昇は、2021年1月から始まった。この上昇トレンドの主な加速は、2021年1月からと2021年9月からの2回だった(図表1参照)。この2つの局面に共通したのは、前者では景気回復を受けた米長期金利上昇、そして後者では金融緩和見直し加速思惑を受けた米短中期金利上昇といった米金利の動きが手掛かりになったということ。そしてもう1つ、テクニカルには、90日MA(移動平均線)など短期の移動平均線からのかい離率の保合い放れだった。
米ドル/円について、90日MAからのかい離率で見ると、2021年1月にかけて、そして2021年9月にかけて、同かい離率は2%程度の範囲内での小動きが続いていた。ただ、それをブレークするとかい離率が急拡大、つまり米ドル一段高となった(図表2参照)。以上のように見ると、2020年からの米ドル/円上昇トレンドにおいて、その加速は、短期の移動平均線で見た保合い上放れといったテクニカルな影響での説明も可能だっただろう。
為替相場においても、小動きが長く続くほどエネルギーが蓄積され、小動きの終わりとともに、溜まったエネルギーの発散などにより一方向へ大きく動く傾向があった。これは、既に見てきた2021年以降の米ドル/円上昇トレンドが加速する局面でも機能した可能性があったのではないか。
さて、米ドル/円について90日MAからのかい離率で見ると、2021年10月頃から1~3%といった2%の範囲中心の一進一退が続いた形となっていた。足元の米ドル/円の90日MAは113円程度なので、これを1%上回った水準は114円程度、そして3%上回った水準は116円半ば。
これまで見てきたことを整理すると、目先的には114~116円半ばのレンジを抜けた方向に米ドル/円は当面大きく動くことになりそうだ。既に見てきた2021年の2度の米ドル上放れを参考にすると、手掛かりは米金利の動向ではないか。
逆に言えば、米金利の動きが手掛かりとして不十分であり、そしてテクニカルに米ドル/円が90日MA1~3%のレンジをブレークできないようなら、レンジ内での方向感の乏しい展開が続く可能性が高いのではないだろうか。