過去の暴落終了との類似と相違
底割れのような状況が続いていたトルコリラは、先週急反騰となった。対円では、6円割れ寸前から、一時は10円を大きく上回るまで反発した(図表1参照)。では、これでトルコリラ安は一段落となったかについて、今回は考えてみる。
トルコリラが急反騰に転じたきっかけは、トルコ政府が20日発表した預金保護策を中心としたトルコリラ防衛策だ。ただ、これがトルコリラ急反騰をもたらしたのは、そもそもトルコリラが短期的に異常なほどの「下がり過ぎ」になっていた影響も大きかったと考えられる。
トルコリラ/円の90日MA(移動平均線)からのかい離率は、一時マイナス40%以上に拡大した(図表2参照)。これは、少なくとも2000年以降では初めてのこと。トルコリラ/円の暴落は、これまでも何度かあったが、90日MAからのかい離率はマイナス30%以上の拡大で一巡してきた。
その意味では、上述のように今回は短期的にこれまでよりも異常なほど「下がり過ぎ」になっていた可能性があり、そういった中でのトルコリラ防衛策発表は、クリスマス前の薄商いも重なったことで、結果的に行き過ぎた相場が急反転に向かう強いきっかけになった可能性はあっただろう。
こういった中で、トルコリラ/円は先週、安値から何と最大で80%以上、週末終値も50%以上の急反騰となった(図表3参照)。このような、安値からの急反騰は、経験的には暴落相場一段落の特徴の1つだ。
例えば、最も近いトルコリラ暴落相場の一段落は2018年8月だったが、この時、当面の底を打ったトルコリラ/円は、その週に最大で25%程度の急反発となった。今回の場合、そんな2018年のケースを大きく上回る急反騰だったということは、やはりトルコリラは当面の底を打ったということなのか。
ちなみに、2018年8月に記録したトルコリラ/円の底値は、2020年3月からの「コロナ・ショック」まで、1年以上も更新されなかった。では、先週記録したトルコリラ/円の6円という安値も、少なくとも2022年中は更新されることはないのだろうか。
気になるのは、これまでのトルコ政府によるリラ防衛策は、利上げが基本だったのに対し、今回は利下げを続けたまま、上述のように預金保護策などでの対応となっていることだ。そもそも、今回のトルコリラ暴落は、インフレ、つまり「モノ」の価値の上昇に伴う相対的な通貨価値の下落が基本と考えられるが、そんな通貨の下落、つまりトルコリラ安を、トルコリラの金利を引き上げることがないまま、果たして止められるのだろうか。
以上を整理してみる。先週のトルコリラ急反騰は、トルコリラ暴落は短期的な「下がり過ぎ」反転で一段落するといった過去のパターンからすると、今回もトルコリラ安一段落の可能性があるものの、インフレ下での通貨安が利上げなしで本当に終わるかなど、なお悩ましさを抱えていると考えられる。