9月1日にデジタル庁が発足する。現在、準備中の同庁のホームページを見てみた。
真っ先に、「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化を」と大きく書かれた目標(?)が目に飛び込んでくる。この瞬間に、(やはり)ダメだと思った。
「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化を」という言葉は一見、優しく響く。しかし、意味不明である。そもそも「誰一人取り残さない」というのは2015年、193の国連加盟国が満場一致で採択したSDGsの理念「Leave No one Behind」のパクリである。あまりに有名になったから、あちこちで使われるようになった言葉だが、軽々しく使われると言葉の重みがなくなってしまう。これだけデジタル・リテラシーが低い国民が大勢いる国、デジタル後進国の我が国で、本当に「誰一人取り残さないデジタル化」ができるとおもっているのだろうか。
その次にはこう続く。
Government as a Service
デジタル庁は、社会全体のデジタル・トランスフォーメーションの実現に向けて、迅速かつ継続的にデジタル改革を推進していきます。国民の幸せにつながるサービス提供を実現し、デジタル社会の形成に尽力してまいります。Government as a Startup
その司令塔となるデジタル庁の立ち上げは、本年9月1日を予定しています。現在は創設に向け、スタートアップ企業を立ち上げるように、ゼロからスピーディに準備を進めています。
デジタル庁の事務方トップの「デジタル監」に一橋大学名誉教授の石倉洋子氏で調整 ‐ というニュースが流れたのは昨日のことだ。発足の1週間前でもトップが決まっていなかった。99.9%確実に、デジタル庁発足初日からのロケットスタートは期待できないだろう。こんなスピード感で「スタートアップ企業を立ち上げるように、ゼロからスピーディに」とは聞いてあきれる。
その前段にある「デジタル庁は、社会全体のデジタル・トランスフォーメーションの実現に向けて、迅速かつ継続的にデジタル改革を推進」というのも気になる。
そもそもDX ‐ デジタル・トランスフォーメーションをどう定義しているのだろうか。DX ‐ デジタル・トランスフォーメーションとは単なるIT化ではない。我が国においては、この点についての理解があまり進んでいないように思われる。例えば、「DXで語られる話のほとんどは『デジタル技術を使って業務改善をやります』という、ちょっと前にIT化の脈絡で語られたことの言い換えに過ぎない」(西山圭太著, 解説・冨山和彦『DXの思考法』)という指摘もある。同書によれば、DXとはCX(コーポレートトランスフォーメーション)であり、IX(インダストリアルトランスフォーメーション)である。すなわち企業(コーポレート)や産業(インダストリー)構造を大きくトランスフォームする(作り変える)デジタル革命こそがDXと呼ぶにふさわしいものである。それは単に、社内のIT化投資を推進 ‐ というものとは一線を画す概念であろう。そこまでの気概(と理解)がデジタル庁にあるだろうか。デジタル革命によって日本の社会を作り変えるといったような、大きな「絵」はそっちのけになるのではないか。平井担当大臣の数々の醜聞などを見るに、巨額のデジタル関連予算を巡る政治家・官僚・ITゼネコン(巨大IT企業)の利権争いの巣窟となりそうな気がする。
さはさりながら、マーケットではデジタル関連銘柄が動意づいてきた。官公庁向けITサービストップのNTTデータ(9613)の動きが顕著である。
NRI(4307)も上放れ出した。
同社を筆頭にITゼネコンを買っておくのが間違いなさそうだが、実は小型・新興企業でも有望なところはいくつもある。
以前に紹介して、それから長く調整入りしたコムチュア(3844)も、お待たせしましたが、やっと復活の兆し。6日続伸で200日線を越えてきた。
新しいところでは、例えばウィングアーク1st(4432)も、来ている。
同社は帳票に関する業務基盤として利用されているソフトウェアやそれらをベースとしたソリューションを手掛ける。データエンパワーメントソリューションでは、様々な種類のデータを組み合わせ、分析することにより、気づきや今までにない価値を生み出すビジネスの基盤となるBIソフトウェアやそれらをベースとしたソリューションを展開している。企業内外のデータを収集、蓄積し、データを加工・分析するソフトウェアなどを提供する。
そのほか、すでに実績のあるところでは
サイボウズ(4776)
業務アプリ開発ツール「kintone」を大阪府などに提供
インフォマート(2492)
地方自治体向けの電子請求書システムに注力、三鷹市役所などで実証実験も
チェンジ(3962)
自治体向けRPAサービスを展開。傘下企業はふるさと納税サイトを運営
キャリアリンク(6070)
21年2月期の営業利益を従来予想の5億8500万円から17億9500万円(前期比2.6倍)への大幅な増額修正を発表。政府が普及に力を入れるマイナンバー分野でも定評があり、マイナポイント事業スタートを追い風に新たな受注開拓も視野に入る。
など。