日本株相場の目を覆わんばかりの低迷ぶりは、日本という国がいかに凋落したかということの表出である。コロナ禍がこの国がいかにダメであるかを浮き彫りにした。この国は徹頭徹尾、ダメである。この国は終わっている。そんな声が日本中から沸々と湧き上がっている。「ワクチンもない。クスリもない。タケヤリで戦えというのか」という宝島社の新聞ぶち抜き広告 ‐ 正確には「見開き二連版(全30段)広告」という ‐ を見るまでもない。

ワクチンだけの話にとどまらない。その衝撃的な広告が掲載されたのと同じ日、日経のオピニオンで秋田さんはこう書いた。「80年間、なぜ変わらない」。80年前、パールハーバーを襲撃し、無謀な太平洋戦争に突入していった時とこの国はなんら変わらないというのだ。優先順位なき戦略、根拠なき楽観論、縦割り組織の弊害。戦前、戦中の国家体制がそっくり今も残る。僭越だが僕も日経ヴェリタスで異口同音のことを述べた。この国のシステムすべてが古びたままであると。完全に機能不全に陥っていると。

日本全体が閉そく感、厭世観に包まれている。それがこの冴えない相場の根本だろう。この見立てはおそらく間違っていまい。

しかし。

しかし、そうだとすれば ‐ 市場がそれを理由に日本株を低評価しているのだとすれば ‐ それは市場が間違っている。

「日本がダメ」なことと「日本企業がダメ」なことはイコールではない。日本企業は国籍を日本に置いてはいるが、その活動はもはやボーダーレス。「国家」なんていうものの枠を軽々と飛び越える。

日本株は全体として「グローバル景気敏感」と言われるが、日本株相場をけん引する銘柄の多くはグローバルに活躍する企業だ。国内の景気が低迷してもグローバル景気が堅調ならば業績を伸ばすことができる。実際に、2014年度の我が国のGDPは消費増税の影響もあってマイナス成長だったが企業業績はそれまでの増益ペースをさらに拡大し、当時の過去最高益を更新したのである。

出所:QUICK、内閣府データよりマネックス証券作成

そして現在のグローバル景気は米ISM景気指数を筆頭に過去最高水準にある。

グローバル製造業PMI&米ISM製造業
出所:Bloomberg

こういう状況ではグローバル景気敏感である我が国の製造業の業績が堅調であるのは当然であろう。典型例はトヨタ自動車だ。2021年3月期の純利益が10%増の2兆2452億円になったと発表した。コロナ禍でも自動車の需要が回復し、世界的に販売が増えた。半導体不足による生産調整を迫られたが、原価低減などで補い増益を確保した。トヨタのお家芸の真骨頂である。2022年3月期の純利益見通しについては、2%増の2兆3000億円になりそうだと発表した。過去最高益だった18年3月期以来の高水準となる。

期初における企業側の業績見通しが慎重なのは例年のことであり、コロナの収束が見通せない現状ではなおさら保守的なものになるのは当然だ。だが、欧米や中国の景況感に鑑みれば、時間の経過とともに本邦企業の業績は上方修正されていくだろう。日本の景気動向を懸念して日本株を低評価にしているとすれば、それは市場がミスプライスを提供していることになる。

実はトヨタの株価は右肩上がりのトレンドを継続している。押したところで75日線も割らず、緩やかに上昇基調を辿る200日線ははるか下だ。三角保ち合いを大きく下放れた日経平均とは異なる動きだ。マーケットはこういう企業をしっかり見ている。

トヨタ(7203)75日線(緑)200日線(黄)
出所:Bloomberg

海外との景況感、インフレ見通しの差が開き、円安観測が根強いが、それもまたグローバル製造業の追い風になるだろう。いまこそ日本のグローバル景気敏感株に目を向ける時だ。

もうひとつの「市場の誤り」 ‐ インフレ懸念については、また次回に述べる。

最後に。

本当なら…。何度この言葉をつぶやいただろう。本当なら新緑のこの季節、初夏の陽ざしを浴びながら半袖のポロシャツで気ままに街を歩く。ところが天気までぐずついて、そんなことさえかなわない。思わず、もうひとつのつぶやきが口をついて出る。この国はダメだ。終わっている。

きっとあなたもそう思うだろう。そんなあなたにRCサクセションのボーカルだった忌野清志郎の言葉を贈ろう。

「自分がやることがハッキリするんだよね。世の中が最低だっていうことが分かると、じゃ自分が何をするのか」(忌野清志郎・名言集『使ってはいけない言葉』百万年書房)

日本はダメだ。世の中最低だ。でも、その最低の世の中で、僕らは何をするべきか。嘆くばかりでは、自嘲するだけでは何も変わらない、始まらない。僕らにできることをやろう。粛々と行おう。粛々と、だが堂々と胸を張って、やろうじゃないか。