米ドル高は一時的か否か
米ドル/円が、年初の102円台から110円に近づくまで上昇してきた(図表1参照)。ただ、2020年までも1年のうちで110円を上回ることは何度もあった。その意味では、絶対的な水準としては、取り立てて米ドル高を意識するものではないだろう。
ただ、これを90日MA(移動平均線)からのかい離率でみると、イメージはかなり違ってくる。米ドル/円は、2016年には、いわゆるBrexit(英国のEU離脱)、トランプ・ラリーなどで大相場となったが、2017年以降は年間値幅が10円前後に留まる小動きが長期化していた。その中では、実は90日MAを2%以上上回ると米ドル高は一巡するパターンが繰り返されてきた(図表2参照)。
ところが、先週にかけて米ドル/円は90日MAからのかい離率がプラス2%を大きく上回り、4%程度まで拡大した。110円を超えない中でありながら、90日MAとの関係で見ると、小動きが続いてきた2017年以降ではなかった米ドル高・円安になり始めていると言える。
これは、年間値幅がほんの10円程度に留まるといった長く続いた米ドル/円の小動きが終わり、その上で米ドル高・円安へのトレンドが始まっていることを示すことなのか。
ちなみに、トレンドの見極めで、私が基本的に使うのは52週MAである。経験的には、トレンドと逆行する一時的な動きは、52週MAから逆方向に5%以上の動きにはならない。
足元の米ドル/円の52週MAは106円程度になっている(図表3参照)。
その意味では、短期的に111円を上回ってくるようなら、52週MAを5%以上上回ることになる(図表4参照)。
それは経験的には、一時的な米ドル高ではなく、継続的な米ドル高、つまり米ドル高トレンドが展開している可能性が高まる。
逆に言えば、米ドル安・円高トレンドの中で、あくまで一時的な米ドル反発に過ぎないなら、111円は超えられないといった見通しになる。