僕の新刊が明日発売になる。発売前からAmazonの金融・証券カテゴリーでは売れ行き第1位。書籍全体でもランキングは上位でおかげさまでベスト・セラーになりそうだ。

本の帯には「日経平均3万円へのシナリオはこうだ!」などと、シケたことが書かれているが、本書ではもっと高い株価を挙げているので、ぜひお読みいただければ幸いだ。メインシナリオ、アップサイドシナリオ、ワーストシナリオと3つのシナリオを提示、それらの実現確率も3つの組み合わせで来年の日経平均の期待値を算出した。そのシナリオの背景を図表など豊富なデータをもとに詳細に解説している。リスクについても述べている。最終章はバブルの見分け方と波乱を乗り切る相場の極意。充実の内容で買って損はない。一家に一冊、ぜひお買い求めください。

出所:マネックス証券ウェブサイト

なお、マネックス証券ではこの本を抽選で100名様にプレゼントという企画がある。どしどしご応募ください。とは言え、100名様だから、まず当たらないだろう。その場合は、本屋さんでおカネを払って買ってください。一家に一冊、備えあれば憂いなしである。

 

さて、2019年春には『ROEを越える企業価値創造』というハードカバーを上梓したが、これは柳さん、井出さんたちとの共著。単著は2014年の『勝てる!ROE投資術』以来6年ぶりだ。日本経済新聞出版からの刊行はこれで3冊連続となる。その『勝てる!ROE投資術』には、こんな一節がある。

<投資初心者のための資産運用を解説した本に、こう書いてあった。「まずはROEの高い企業の株を買ってじっくり持っておけば間違いはない」。 大きな間違いである。百聞は一見にしかず。論より証拠。その証拠をお見せしよう>として、こういうグラフを記載した。

 

出所:広木隆『勝てる!ROE投資術』

これはROEのファクターリターンだ。累積のグラフを見るとずっと右肩下がり。単純に高ROEにベットしてもリターンはとれない、と指摘したのであった。

ところが、それから6年の歳月が流れ、この状況もかなり変わってきた。ROEのファクターリターンの累積値が、じわりと右肩上がりになってきたのだ。つまりROEが効くようになってきたと言える。

出所:QUICK第4回 オンラインセミナー「グロースとバリューのファクター動向に関する考察」資料より抜粋

そもそもなぜROEは効かなかったのか?著書『勝てる!ROE投資術』の中で、僕は「ROEの平均回帰性」という理由を挙げている。<儲かる事業には新規参入が増えて利益率が下がり、逆に儲からない事業は他社が退出して残存者の利益率が上がっていく――。こうした企業間の競争原理が、ROEの平均回帰性が生じるひとつの原因との指摘がある。しかし、日本の産業界の硬直性、保守性を考えると競争原理だけではうまく説明できない。そのほかに考えられる要因としてはROEが高い企業が、利益を内部留保すると自己資本が増加し、その後のROE低下を招くということが挙げられるだろう。これはまさに「ROEという指標が抱える自己矛盾」にほかならない。なぜなら、利益を出すがゆえに利益剰余金が増えて自己資本が増えるのであり、翌期は増加した自己資本を抱えてさらに利益を稼がなければならない。すなわちハードルがどんどん上がっていくようなものだからである。さらに言えば、景気拡大局面では、業績が悪化していた企業の回復率が大きいために、もともと高ROEだった企業が相対的に割り負けるという面もある。>

では、ROEが効くようになってきたというのは、ROEのこの平均回帰性がなくなったのだろうか。QUICKの安間聡さんの分析によれば、依然としてROEの平均回帰性は見られるものの、2010年以降、平均回帰の傾向が弱まってきているという。階層の固定化が見られる - つまりROEが高い銘柄はそのまま高いグループに、低い銘柄はそのまま低いグループにとどまる傾向が強くなってきているというのだ。安間さんは、「高ROE銘柄や低ROE銘柄の階層の固定化が、ROEの平均回帰の動きを弱め、高ROE銘柄群の持続的なアウトパフォーム、低ROE銘柄群の持続的なアンダーパフォームを引き起こしている」と主張している。

つまり高ROEで高パフォーマンスの銘柄は今後しばらく勝ち続ける可能性がある。そういえば、去年のベストパフォーマーだったレーザーテック(6920)は、昨年あれだけ買われたのだから今年はもう来ないだろう、と友人と話していたら、今年もやっぱりすごいパフォーマンスで驚いた、なんて話を書いたのは、6月5日のレポートだった。ということは、今年のベストパフォーマー、エムスリー(2413)の快進撃は来年も続くだろう。

今の時代は勝ち組と負け組、優勝劣敗がはっきりつく時代だ。格差が解消しないというのは社会問題でもあるが株式市場も同様であるのかもしれない。今年の勝ち組、SGHD(9143)、日本ペイントHD(4612)、カプコン(9697)、ダイフク(6383)、Monotaro(3064)などは来年もまだ強いだろう。