直近の価格動向

J-REIT価格は、11月に入ってから回復傾向を示している。東証REIT指数は10月に下落基調が続き10月6日の1,754ポイントから10月30日には1,635ポイントまで下落したが、11月5日には1,700ポイント台を回復した。

価格上昇の理由は前回の連載で売られ過ぎを指摘した時価総額が市場最大の日本ビルファンド投資法人(証券コード8951、以下NBF)の価格が10月末から反発していることに加え、株式市場と同様に新型コロナワクチン開発のポジティブなニュースの影響が大きいと考えられる。

11月10日には、NBFを含めオフィス系銘柄の価格が揃って上昇している。さらにホテル系銘柄は、インヴィンシブル投資法人(証券コード8963)とジャパン・ホテル・リート投資法人(証券コード8985)がそれぞれ16%、11%を超える上昇を示した。

投資リスクの高い状態が続くホテル系銘柄

このようにホテル系銘柄は、新型コロナウイルスに係わる状況の変化によって価格が大幅に変動している。3年程度の中長期的な視点に立てば、新型コロナワクチンの普及とともにインバウンド(訪日客)も含め宿泊需要が回復する可能性が高い。このような視点で投資を行う場合には、リスクを過大に評価すべきではないと考えられるが、短期的なリスクには注意が必要だ。

コロナ禍における日本の宿泊需要はGo Toトラベル事業によって辛うじて支えられているが、J-REITの多くが保有する都市部のビジネスホテルには恩恵が少ない。日本国内で新型コロナウイルス感染拡大の第3波が本格的に到来した場合には、Go Toトラベル事業が中止となることや旅行客の自粛が進む可能性がある。

このような事態になった場合には、ホテル運営会社の経営がさらに厳しくなり、J-REITが固定賃料を受け取るのが難しくなることも視野に入れる必要があるだろう。

さらに第3波が到来しなくても、Go Toトラベル事業の終了期限とインバウンドの回復までに期間が空く可能性が高い。都市部のビジネスホテルにおいてはインバウンドの増加を見込んで建設ラッシュが続いてきたため、国内旅行客だけでは収益の回復は難しい。さらにGo Toトラベル事業で国内宿泊客需要の「先食い」を行っていることを考慮すると、Go Toトラベル事業の終了で宿泊客が大幅に減少するリスクが高いと考えられる。

またインバウンドの動向にも注意が必要と考えられる。コロナ禍前の2019年にインバウンドは3200万人弱まで拡大していたが、そのうち中国人が960万人を占めていた。米中関係が今後悪化することになれば、日中関係にも波及するリスクが高くなると考えられる。

つまり中長期的な視点でのホテル系銘柄への投資であっても、インバウンドの30%近くを占める中国人訪日客の大幅な減少リスクは低くないという点にも注意しておきたい。

現状ではホテル系銘柄への投資は、これらのリスクが比較的低いと考える投資家向きと言えるだろう。