昨年まで「マネックス全国投資セミナー」で北は北海道から南は九州・鹿児島まで日本全国を巡っていた。行く先々での地元料理で一杯やるのが楽しみだった。今年度はオンラインでの開催に形を変え、全国47都道府県を複数のエリアに分けて「マネックス全国投資セミナー」を開催することになった。オンライン開催にあたってはZoomを使用する双方向型のセミナーになる。
第2回の今日、10月23日(金)は茨城県、栃木県、群馬県、千葉県のお住いの方がご参加くださる。そこで伝えようと思っていることの一部をレポートで配信しておきたい。スガノミクス相場のテーマというかキーワードは、
である。菅政権は規制改革を進め、この日本の古い慣行を打破して経済を活性化しようとする政権だ。東証マザーズ指数が14年ぶりの高値をとってきたことに表されるように、新興の勢いのある企業が物色されている。まさに市場で新陳代謝が起きている。
新陳代謝と言えば、日経500種平均がバブル期の1989年12月末につけた高値を上抜け、31年ぶりに史上最高値を更新したことが市場の大きな話題になった。この指数は毎年1回、過去3年間の売買高、売買代金、時価総額をランキング化して上位500社を選び直す。その結果、新型コロナウイルス禍でも業績が伸ばせると評価された任天堂(7974)を筆頭として、設備投資関連としてグローバルに強みを発揮するキーエンス(6861)やSMC(6273)、アジア展開が期待される日本ペイントH(4612)、好業績のニトリHD(9843)など日経平均には未採用の銘柄が多く含まれる。日経平均やTOPIXが当時付けた過去最高値の約6割の水準にとどまる中、突出したパフォーマンスを演じているのはこれらの貢献である。日経平均やTOPIXは新陳代謝が乏しく、すでに衰退している企業群も多数入っている。一方、日経500は流動性を十分加味して入れ替えが適切に行われているから、こういう「活きのいい」銘柄が入ってくる。
日経500が日経平均やTOPIXを凌駕していることの示唆は多い。過去3年間の売買高、売買代金、時価総額という単純な指標で機械的に銘柄を入れ替えるだけでこれだけの差が出る。かつてTOPIX一辺倒の運用のアンチテーゼとしてスマートベータが流行ったが最近ではあまり聞かれなくなった。日経500種平均こそ究極のスマートベータだ。日経500種平均の高値更新はスマートベータ戦略再考の契機となるのではないか。
今でこそ「コロナを奇禍として生産性を向上させよう」という議論を多く目にするが、僕はかなり早い時期からこの主張をしてきた。レギュラー・コメンテーターをつとめるテレビ東京の「ニュース・モーニングサテライト」という番組にはゲストがフリップにキーワードを書く「今日の経済視点」というコーナーがあるが、そこで「禍転じて福となす」と書いたのは2月のことだった。このコロナという禍(ピンチ)を福(チャンス)にしようという意味だ。4月には「プロの眼」というコーナーでもっと詳しく「コロナ危機 労働生産性向上の契機となるか」という解説をしている。
そこでDXということになるのだが、鍵は無形資産だ。昔は巨大な生産設備など有形固定資産が企業の優劣を決めたが、いまやそんな時代ではない。むしろ過大な資本を持たず、商標権や特許、ソフトウエアなど無形固定資産で稼ぐ時代だ。
無形固定資産を有形固定資産で割った、無形固定資産倍率という指標が注目されている。TOPIX500採用銘柄でランキングしたトップ30社をリストアップした。
トップは医療情報サービスのエス・エム・エス(2175)。20年3月期は12.5倍と5年前の2.8倍から拡大した。無形資産の多くを買収企業のブランドやノウハウなど商標権が占める。企業買収に積極的で、顧客拡大につなげている。21年3月期の純利益は微増ながら11期連続で最高となる見通しだ。前述の日経500種平均株価にも採用された。医療のデジタル化もずっと前から注目されているキーワードだ。エムスリー(2413)、テルモ(4543)、大塚HD(4578)などの銘柄も入っている。
DXのど真ん中の銘柄と言えば、GMO‐PG(3769)だしZHD(4689)だ。当然のトップ5入りである。
無形資産でわかりやすいのがNRI(4307)やNTTデータ(9613)といったシステムインテグレーター(通称SIer)だ。システム業界の無形資産の多くは「ソフトウエア」が占める。独自ノウハウが詰まったアルゴリズムや業務効率化を図るプログラムなどだ。これらの企業は顧客のニーズに沿って社会に必要な「仕組み」をITを使って構築する情報サービス企業。まさにこれからのDX化が加速する社会の主役であろう。