リスクオン前提の通貨選択の考え方

今週は、2020年の為替展望について書いてきた。私の2020年の展望を考える上でのメインテーマはリスクオンの可能性が高いということだ。リスクオンということなら、経験的には代表的な「安全資産」の円は売られる可能性が高く、そして基軸通貨の米ドルも売られる可能性がある。この結果、円と米ドルの同時安となる可能性がある。

円安と米ドル安の同時進行なら、米ドル/円、クロス円、ドルストレートは基本的に全て上がる可能性がある。そうであるなら「買う」必要があるだろう。「買う」なら、金利差と整合的な判断としては相対的に高い金利の通貨を探すことになるだろう。

この「金利差と整合的な通貨選択」という考え方は重要だろう。なぜなら相場見通しは絶対ではないからだ。相場見通しが外れた上に、金利差とも逆の取引を行っていた場合は二重に損失が発生する可能性が生じ、取引の継続を困難にする懸念が強まる。

逆に、相場見通しが外れた場合でも、金利差と整合的な取引を行っていた場合は、金利差から得られる収入が、相場の損失を少しでも埋める役割となり、取引継続を助ける可能性がある。

「買い」と整合的な相対的に高い金利の通貨選択

これは、今年の具体例で考えるとよりわかりやすいのではないか。今年は、米中の報復合戦などを受けて、株安、リスクオフが広がるとの予想も少なくなかった。そうであれば、基本的には「安全資産」の円は買われることから、米ドル/円、クロス円とも下落する可能性が高いので「売る」通貨選択を考える必要がある。

ただこの場合、なじみのある米ドル/円を「売る」となると、円より高い金利の米ドルを「売る」ことから、金利差(スワップ)は支払いとなる。その上で、予想ほど株安が広がらない、そして円高にもならないとなると、相場の損失と金利差の支払いにより二重の損失が発生し、取引の継続が厳しくなるケースはあったと見られる。

相場が下落する見通しで、「売る」通貨選択を考えるなら、金利差と整合的な判断とは相対的に低い金利の通貨を選ぶということだろう。今年の場合ならそれはユーロだった。ユーロ/米ドルやユーロ/円の売りなら、相場見通しが外れ、相場が下がらなくても、少なくとも金利差の収入は得られることとなっただろう。

さて、2020年について私はリスクオンを予想していると述べた。となると、米ドル/円もクロス円も上がる可能性が高い。上がるなら「買う」必要がある。「買う」ことと金利差で整合的なのは相対的に高い金利の通貨を買うということ。以上からすると、ユーロ/円、そしてユーロ/米ドルなどドルストレート以外は通貨選択の対象になるだろう。

米ドル/円や新興国通貨/円の買い

FXでの収益機会は、価格変動(上がるか、下がるか)と金利差の2つ。前者は予想が必要という意味で確実性の不安定なものであり、一方後者は急に変わらないという意味で安定性の高いものといえる。

もう少しわかりやい言い方をすると、予想は外れるということで「裏切る」こともあるものだが、金利差は「裏切る」リスクの低いもの。2020年の私の予想はリスクオンだが、予想に反してリスクオフになる可能性もあるだろうし、リスクオンなら経験的には円安になる可能性が高いが、例外的に円高になる可能性もゼロではないだろう。

ただ、円安予想を前提に「買う」通貨選択を考え、金利差と整合的な取引を選んだ場合、金利収入が安定的に得られることの意味は、程度差こそあれ、相場予想が外れた時こそ助けになるだろう。

以上を踏まえ、今週書いてきた2020年の為替展望も踏まえると、2020年のFX投資戦略は、比較的金利差の大きい通貨ペアからの選択ということで、米ドル/円や新興国通貨/円の「買い」が基本になるのではないか。

取引を行う上では、予想しないことには始まらない。予想した上で、「買う」か「売る」かが初めて決まる。ただ予想は絶対的なものではない。この大いなる矛盾に対して、少しでも助けになる可能性のあるのが、基本的に安定性の高い収入源である金利差だろう。

そういった考え方を基本として、私はより確からしい相場見通しを考えるとともに、それを前提とした売買と基本的に金利差に矛盾のない通貨選択でのFX投資戦略を、セミナーやレポートを通して提案したいと思う。