一時156円までの円高を主導した可能性=ヘッジファンドの円買い
ヘッジファンド(以下ヘッジF)の取引を反映しているCFTC統計の投機筋の円ポジションは、10月27日時点の買い越し(米ドル売り越し)が、1週間前の10月20日時点の6万枚から、10万枚に拡大した(図表1参照)。
米ドル/円は、約1ヶ月続いた157~159円という狭いレンジでの小動きを下抜け、10月23日に156円割れ近くまで下落する場面があったが、このような円ポジションの推移を見ると、ヘッジFがそれを主導した可能性もありそうだ。
他の主要通貨は対米ドルで逆に大幅な売り越し
このようなヘッジFの積極的な円買いは、かなり「異例」と言える。というのも、円以外の主要通貨の多くは、対米ドルで逆に大幅な売り越しが続いているからだ。
ユーロは10月27日時点で14万枚と、2026年以降の売り越し最高を更新した(図表2参照)。これには、フランスを中心とした最近の欧州の財政規律への懸念がユーロ売りになっている可能性も当然あるだろう。
豪ドルは10月27日時点で売り越しが5万枚と、1週間前の12万枚から比較的大きく縮小した(図表3参照)。ただそもそも、その12万枚が、豪ドルとしては過去最高の売り越しだった。基本的には、10月初めにかけて続いた世界的長期金利上昇の中で、主要通貨の多くは米ドルに対して大きく売られる展開となり、それが最近の「株安=金利低下」によって修正されたということだろう。これに対して、円は9月以降、対米ドルでの買い越しを維持してきたが、それはやはり異例と言える。
日米金利差による円劣位から見ても不合理な円買い
ヘッジFの円買いの異例さは、日米金利差の観点からも分かりやすい。日米の政策金利差(米ドル優位・円劣位)は一時の5%以上から足下では3%程度まで縮小したが、金利差3%程度の円劣位はまだまだ円買いには不利だろう。
日米政策金利差は、2008年の「リーマン・ショック」以降、しばらくの間ほぼゼロの状況が続いたが、そうした中でもCFTC統計の投機筋の円買い越しが10万枚以上に拡大したことはなかった。別の言い方をすると、円買い越しが10万枚以上に拡大したのは、2025年以降が初めてだった(図表4参照)。それは、ヘッジF業界出身のベッセント氏の財務長官就任のタイミングと重なるものだった。
円買い越し最高は約18万枚=条件次第で円買い拡大の可能性
ベッセント長官は、9月にかけて日本政府に対し、円高を促す政策への期待を繰り返し発言した。これまで見てきたように、他の主要通貨や日米金利差で説明が難しい9月以降のヘッジFによる異例の円買いは、ベッセント長官の言動とはかなり整合していると言えそうだ。やはりヘッジFの「異例の円買い」は、日米通貨当局による円安是正策と連携している可能性が高いのではないか。
CFTC統計の投機筋の円買い越しは、日米金利差縮小や当時のトランプ米大統領による関税政策の発表をきっかけに起こった「関税ショック」の中で、2025年4月には18万枚近くまで拡大したのがこれまでの最高だった。それを参考にすると、ヘッジFはこの先も日米金利などの条件次第では、円買いをさらに拡大させる可能性もありそうだ。
