企業の配当利回りを見る際には、配当水準だけでなく、その原資となる利益や財務基盤にも目を向けたいところです。今回はTOPIX500構成銘柄のうち金融関連業種を除き、直近会計期のネットデットがマイナス、すなわち現金・現金同等物が有利子負債を上回る企業を対象に、所属業種のなかで会社予想ベースの配当利回りが最も高い銘柄を抽出しました。
<スクリーニング条件>
・TOPIX500構成銘柄
・東証33業種分類のうち、銀行業、保険業、証券・商品先物取引業、その他金融業を除外
・直近会計期のネットデットがマイナス
・会社予想ベースの今期配当利回りが所属業種内で最も高い銘柄
なかでも注目したいのが、マブチモーター(6592)とネクソン(3659)です。
マブチモーターの2026年12月期上期は、売上高が前年同期比12.1%増となったほか、営業利益も8.5%増加しました。自動車電装機器向けでは、パワーシートやパワーウインドウ、ミラーなどの用途が伸びたことに加え、円安も増収に寄与しました。
業績改善を受けて、年間配当予想も従来の56円から70円へ増額されました。同社は配当政策としてDOE(純資産配当率)3-5%を目安とし、2030年までは累進配当を基本方針としています。さらにROEが10%を下回る、またはPBRが1倍を下回る場合にはDOE5%を基準とする方針を掲げており、手元資金を抱えるだけでなく、資本効率を意識した株主還元を進めている点が特徴です。
一方、情報・通信業から抽出されたネクソンの予想配当利回りは18.0%と、今回の銘柄群のなかでも突出しています。ただし、この数字を見る際には注意が必要です。2026年12月期の年間配当予想475円のうち、415円は今期限りの特別配当です。
ネクソンは主力の「メイプルストーリー」フランチャイズなどから安定したキャッシュを創出しており、2026年6月末時点の現金残高は8420億円に達しました。会社は、将来の成長投資に必要な資金を確保してもなお余力があるとして、資本効率の改善を目的に総額約3240億円の特別配当を決定しました。上期の売上収益も前年同期比17.4%増、営業利益は12.8%増となっており、単に保有資産を取り崩して還元するのではなく、本業のキャッシュ創出力を背景とした施策とみることができます。
もっとも、通常の年間配当予想は60円であり、特別配当を除いた試算での配当利回りは約2.3%です。したがって、表面上の18.0%という配当利回りが来期以降も続くとみるのは適切ではありません。一方で、ネクソンは前年度営業利益の33%以上を配当と自己株式取得を通じて還元する方針を掲げ、ROEについても10%以上を最低基準、中長期的には15%を目標としています。今回の特別配当は、潤沢なネットキャッシュを抱える企業が資本効率改善に動いた事例といえそうです。
高い配当利回りは株式投資の魅力の一つですが、その持続性は企業によって異なります。マブチモーターのように累進配当やDOEを通じて継続的な還元強化を目指す企業がある一方、ネクソンのように蓄積した余剰資金を一時的な特別配当として株主へ還元する企業もあります。配当利回りだけでなく、企業の財務基盤やキャッシュ創出力に注目してみてはいかがでしょうか。
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