先週に続き、制度の話です。2022年、政府は「スタートアップ育成5か年計画」を策定し、投資額10兆円やユニコーン企業100社などの目標を掲げました。先日は、スタートアップ向け融資の規制緩和も報じられ、資金供給を増やす施策は着実に進んでいるように思います。

もちろん、資金は不可欠です。資金がなければ挑戦そのものが始まりません。一方で、会社は資金調達だけで成長できるわけではありません。商品やサービスを買ってくださるお客さまがいて、売上が立ち、事業は続いていきます。

だから、ふと考えるのです。「何を目的にスタートアップを支援するのだろう」と。

本来の目的は、投資額を増やすことでも、ユニコーン企業の数を増やすことでもないはずです。新しい技術やサービスが社会に広がり、付加価値を生み、生産性が高まり、日本経済が持続的に成長すること。そのための手段として、投資額やユニコーン企業数というKPIがあるのだと思います。

ところが、数字は分かりやすいがゆえに、ときとして目的そのものになってしまいます。これはスタートアップ政策に限りません。企業経営でも、サステナビリティでも、DEIでも、「測りやすい数字」を追いかけるあまり、本来実現したかったことを見失うことがあります。

需要創出に向けた取り組みも進められていますが、「需要をどう生み出すか」にもっと光が当たってもよいように思います。ただし、スタートアップなら何でも支援すればよいという話ではありません。健全な競争を通じて、市場で選ばれ、本当に価値を生み出す企業が成長する環境こそが重要です。

そのためには、国や大企業の調達やIT投資が、より多く日本の優れたスタートアップへ向かう仕組みも大切だと思います。スタートアップは売上を得て次の開発や雇用に投資し、その技術やサービスを使う企業は生産性を高める。そんな好循環が、日本全体の成長につながっていくはずです。

Funding(資金供給)も、Demand(需要創出)も、もちろん数字も大切です。でも、数字は目的ではなく、目的に近づいているかを測るためのものです。目標を追いかけるときほど、その数字が何のためにあるのか。その先にある本当の目的や意味を、問い続けたいと思います。