円安阻止の判断基準が変わった可能性

日本の通貨当局は、2022年と2024年に円安阻止の米ドル売り・円買い介入を行ったが、介入を開始した米ドル/円の水準は、いずれも5年MA(移動平均線)を3割程度と大きく上回っていた。これに対して、4月30日は159円程度で介入を開始したとすれば、それは5年MAを13%程度上回るにとどまる水準だった(図表1参照)。

【図表1】米ドル/円の5年MAかい離率(1990年~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

また、2022年と2024年の米ドル売り・円買い介入は基本的にはすべて120日MAを5%以上上回る水準で行われたと見られる。これに対して、4月30日に159円で介入が開始されたとすると、それは120日MAを1%程度上回るに過ぎない水準だった(図表2参照)。

【図表2】米ドル/円の120日MAかい離率(2022年~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

円安阻止、日本主導から米政府主導へ

また、上述の5年MAと120日MAとの関係という2つの条件をクリアしながら、結局、円安阻止介入が行われなかった2023年は、2022年の介入局面での米ドル高・円安のピーク更新に至らなかったことが、介入が実現しなかった理由の可能性がある。これに対して、4月30日には、2024年の介入局面の米ドル高・円安のピーク、161.9円を更新する前に介入が実行された。

以上のように見ると、今回の介入は、同じ円安阻止ながら、判断基準が2022年や2024年のときから大きく変わったのかもしれない。そうであれば、これまでの日本政府主導の円安阻止から、米政府主導へと変わった可能性が考えられる。

円安が止まらなければ日米協調介入の可能性も

1月23日、米ドル高・円安が1ドル160円に迫る局面で、日本の通貨当局は介入の前段階とされる「レートチェック」に動いた。ただ米ドル安・円高への反応が小幅なものにとどまる中で、NY時間に入ると米通貨当局も「レートチェック」を実施、これに対して為替相場は大きく米ドル安・円高へ反応した。

これについてその後、日本から米国に協力を要請したものではなく、ベッセント米財務長官が主導したものだったと一部で報道された。これを参考にすると、今回の日本の当局による米ドル売り・円買い介入後も円安が止まらないようなら、この先米当局も米ドル売り・円買い介入に出動する可能性も考えられるのではないか。

目的は160円以上の円安を容認せず=新たな日米合意か

米ドル高・円安が160円に接近したところで「レートチェック」を行い、その水準を超えた160円台に入ったところで、実際の米ドル売り・円買い介入を始めたということは、目的が160円以上の円安を容認しないことにあるように感じられる。

2025年6月に米財務省が為替報告書を公表した際、ベッセント財務長官は、「トランプ政権は、米国との不均衡な貿易関係を助長するマクロ経済政策はもはや容認しないと貿易相手国・地域に警告してきた」とのコメントを発表した。「米国との不均衡な貿易関係を助長するマクロ経済政策」の中には「過度な通貨安」も入るだろう。

以上を整理すると、今回の日本の当局による円安阻止介入は、2024年までの日本政府主導から米政府主導に変わり、160円を超える円安を容認しないことを目的とした新たな日米合意に基づく動きということなのではないか。